目標

第6話

直「で、そのサクラって人は、要するに何なわけ?スカウトマンてこと?」



ドリンクバーのジュースをちびちび飲みながら、チャマが聞いてくる。



藤「だから、全然わかんないんだよ。本名も仕事も、どういうつもりで俺に声かけたのかも、全部不明」

増「…それ、大丈夫なの。俺たちが子供だからって、騙そうとしてんじゃない?」



ヒロの言うことはもっともだ。

しかし、



升「俺たちを騙しても何の得もないぞ?家が大金持ちってわけでもないし。16~7の男4人じゃ、拉致するにも売り飛ばすにもデカすぎるし」



秀ちゃんがそんな笑えない冗談を言って、場は静まりかえってしまった。

ここは、いつも使ってるスタジオ近くのファミレス。

練習帰りに、俺はさっそく例のコンテストの話を持ち出したのだ。



藤「確かに、どっか怪しい気はする」

直「けど…このコンテスト自体は、本物だよね」



そう。

だからこそ、4人とも及び腰なのだ。

応募要項を見る限り、アマチュア限定で行われるというコンテストは、何の問題もないものに見える。


全国に公募をかけたデモテープ選考の後、選ばれた数十組が実際に審査員の前で演奏して、優勝したらCDデビューできる…という良く出来たサクセスストーリー。



升「やるか」

増「えっ?」

升「だからさ、ウダウダ考えてないで、参加してみるかってこと。もし何か怪しいとかヤバイとか感じたら、そん時は荷物持って逃げりゃいいじゃん」



コーヒーをすすりながら不敵な笑みを浮かべるドラマーが、やけに頼もしく見える。



直「おー、秀夫さん、すでに審査員の前で演奏する気満々ですね」

升「そりゃそうだろ。出るからには当然だ」



そうして、俺たちは参加を決めた。

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