第4話

「フジは、それが不満なの?」



不満じゃない。

むしろ、あいつらが俺を信じて一緒にバンドを続けてるというのは、今の俺にとって最大の拠り所かもしれない。


だからこそ、こうして1人で歌ってられるんだ。

俺が1人でも平気なのは、本当は1人じゃないからなんだよ。


特にベースのチャマは、このバンドに全面的に人生を賭けてくれてる。

だからこそ、高校には行かず、調理師の資格を取るという道を選んだ。


あいつがコーヒーとか飲みながらにこにこ笑ってる姿を見ると、俺の呼吸は少し楽になるんだ。

不満なんか、あるわけない。



「なのに、どうしてきみは今、そんな顔してるの」



知らねぇよ。

つーか、そんな顔ってどんな顔だよ。

あんたに何がわかんだよ!



「そのチャマって子は、フジの才能を信じて一緒にバンドを組んでるんだろ。だったら、そこはチャマくんにとっても大切な居場所のはずだろ?」



…チャマだけじゃねぇ、ヒロも秀ちゃんも…

そんな才能がどうとかじゃなくて、楽しいと思ってやってんじゃねーの。


そんなことあらたまって話したことないから、よくわかんねぇけど…

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