第25話

升「チャマ。俺らは甘いんじゃない。ていうか逆だ」

増「うん」

直『なんで?だって俺は、スパイそのものだったんだよ?』

升「俺らが信じてるのは、神様じゃないから」

藤「待て待て待て、それは聞き捨てならない。俺は腐っても教祖だし」

増「でも俺もそうだよ。第一に選びたいのは、神様じゃない」

藤「おまえら!そこは嘘でもいいから、こう…」


升増「「藤原基央」」



…は?何言ってんだ?こいつら。

当たり前のような顔で俺を見る2人と、なるほどと納得した様子のチャマ。


いや、待ってくれ。何がなるほどなのか、俺にもわかるように説明してくれ。



升「俺らが選ぶのは、おまえだよ」

増「正直さ、俺らって小っちゃい頃から輝一会にいるから、もう神様とかあって当たり前なんだよね。生活の一部みたいな」

升「うん。礼拝とか行事も、確かに宗教ではあるんだけど…意味がもっと漠然としてるというか」

増「大切なのは人間なんだよ。おばあ様もお母様もいい人だったと思うけど、俺たちにとっていちばん身近なのは“藤原基央”じゃん」

升「だから」



だから。

だから今まで俺の傍にいてくれたって言うのか。

そんなこと、正直考えたこともなかった。

俺らが一緒に過ごしてきた時間、その意味。

あまりに近すぎて、空気みたいな…


俺がこうしたら、あいつらはこうしてくれる。

当然のようにそう信じられる。

打ち合わせなんかしなくても、自然と役割分担が出来ている。



藤「そっか…そうだったのか…」

直『え、なに藤くん?どうしたの?』

藤「あ。いや、何でもない。ただ…」



ただ、わかっちゃっただけ。

微笑がこぼれる。

それは、俺が今までずっと当然のごとく享受してきた、無意識の幸せ。



升「わかってくれ、藤原。こんなこと口に出して言うのはなんか気持ち悪いけど。俺たちが信じてるのは、神様でも何でもない、おまえだから」

増「チャマだって絶対そうだよ。でなきゃ今、こんな車椅子姿になってないでしょ」

直『…うん。その通りだよ』

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