第22話

藤「チャマ、おい…返事しろよ!なぁ!」



車椅子に乗ったチャマが、ゆっくり顔を上げた。

暗い表情で、俺と目を合わせない。



直『…藤くん』

藤「おまえ、大丈夫なのか」

直『大丈夫ではないよ…』

藤「そ、そうか。そうだよな」

直『ろっ骨は折れてるし、手も足も打撲だらけだし、なんか内臓もちょっと傷ついてるから、しばらく食べるものも制限されるんだって』

藤「でも命に別状はないんだな?何か後遺症とかそういうのも無いんだな?」

直『あったらこんな所来れないし』

藤「良かった…!!」



安堵して車椅子のそばに駆け寄ると、チャマが不意に涙をこぼす。


藤くん、ごめん。おれ側近やめるから。

もうみんなに迷惑かけないから。

親父たちの借金は、俺が何としてでも働いて望月に返すから。

ごめんなさい。

俺は藤くんの好意を利用しようとしたんだ。

ごめん…


必死でそれだけ言うと、顔を膝につけたまま動かなくなった。

まさしく言葉通り“合わせる顔がない”ということだろうか。

悪いと思って、後悔しての発言なんだろうけど、それはそれで随分と勝手なこと言ってくれるな。



藤「側近やめるって何だよ。勝手なこと言ってんじゃねーよ」

直『え?だ、だって俺は、望月の…』

藤「今後もそうなの?スパイ続けちゃうの?」

直『いやそれは無いけど。でも』

藤「だったらやめんな。おまえがいなくなったら、つまんねぇじゃん」

直『は…いや、つまんないとかそう言う問題じゃないでしょ。藤くん、俺が何したかわかってるよね?要は裏切り者だよ?責任とるとかそれ以前の問題として、クビでしょ、切るでしょ、普通』

藤「普通じゃなくて結構。升だってヒロだって、そう言うに決まってるし」

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