第19話

===升視点===



升「藤原は?」

増「部屋。ソファに寝かせてきた」

升「そうか…。なぁヒロ。今、自由に動けるのは俺たちだけだよな」



一般の信者たちは“春の会”の準備に追われているし、チャマの一件を知っている数少ない幹部たちは、その対応に当たっているから。

俺の言葉に、ヒロが笑う。



増「秀ちゃん、遅いよ。もう少し遅かったら、俺だけで特攻してたかも」

升「そっか」

増「でもさぁ…俺ら、殺されるかもね」



ふわふわ笑いながら、怖いことを口にするやつだ。

でもまぁ確かに…

いきなり殺されないまでも、何か危ないことになる可能性はじゅうぶんあるだろう。



升「かもしれないな。でもそれはダメだろ。そんなことになったら、藤原が1人になっちまう」

増「チャマがいるじゃん(笑)」

升「…それもそうか」



思わず、俺も笑ってしまった。

どちらからともなく抱き合う。

そうだ。

あんなケガをしてまで、家を裏切ってまで、藤原を選んでくれたチャマがいるんだ。

万が一俺たちに何かあったとしても、ソファで眠っているあいつは、もう1人じゃない。



物心つく前から一緒に過ごしてきた、俺たちのプリンス。

守るべき人間のために戦ってやろうじゃないか。

命をかけてでも。



目指すは、望月の家だ。

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