第18話

俺がそんなふうにのほほんと過ごしていた頃。


側近の中でいちばん新参者のあいつは、祭祀用の道具をとりに、1人で自分のアパートに戻った。

そこに“黒幕”がやって来た。






突然の“黒幕”の脅しにも、チャマは頑として動かなかったらしい。

その結果、それまでは無かった暴力がふるわれた。

それでも彼は、黙って座り続けた。




チャマは、望月の手先として俺に近づいた。

何のためかと言うと、要するに権力のため。

チャマを先鋒として俺の懐にもぐりこみ、いずれは望月が輝一会を牛耳るつもりだったと。


チャマが選挙に出たのも、とにかく名前を売るためだった。

それが、教祖の方から興味を示して側近に選ばれるなんて、願ったり叶ったりだと言われたらしい。


しかし、チャマは次第に望月に逆らうようになる。

俺やヒロ、升と親しくなるにつれて、もうスパイのような真似はやめたいと思うようになり…

しかし、当然ながらそんなことが許されるはずもなかった。


そして、今日。






升「藤原っ!!」

増「大変だ、チャマが…!」



描きかけのニコルが、ゆがんだ笑顔を見せる。

急を聞いて直井家にかけつけた俺たちが目にしたのは、手足も、身体も、顔も、全身に傷を負ったチャマの姿だった。



直『…ミイラ取りがミイラになるって、こういうことだっけ?』



病院に運び込まれる直前、泣き笑いのような表情のチャマが“藤くん”に向けて発した言葉。

声なき悲鳴をあげて崩れ落ちる俺を、幼なじみの2人が必死で支えた。



信者たちは何も知らず、明日にせまった“春の会”の準備を続けている―――――

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