黒幕

第17話

===藤視点===



だますなら、最後までだましてほしかった。

結局俺のそばからいなくなるなら、最初から来なければよかったんだ。


あんなに笑ってくれたのに。

優しさをくれるなら、スパイでも刺客でも、何でも良かったのに。


優しさを知らなければ、さみしさも知らずに済んだのに。








その日は、翌日に迫った“春の会”の準備で、俺たちのまわりが全体的に慌ただしかった。

側近の3人も、朝からあちこち動き回っている。

と、俺の部屋の前を増川が通りかかった。



藤「ヒロー」

増「何?」

藤「ひまー」

増「こっちは猫の手も借りたいんだけど」

藤「…ごめん」



すぐ、ばたばたとどこかへ行ってしまう。

何か手伝おうにも“こういう時こそ教祖はどっしり構えてないと格好がつかない”と言われてるんだ。


仕方なく、俺は朝からひたすらゲームをしてる。

でも、物足りない。いつもあの3人と一緒にやっているので、1人じゃ盛り上がらない。



藤「…絵でも描くか」



紙と鉛筆を取り出す。

ニコル。黒猫。4人でいる時も、なんとなく描き散らしているものたち。

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