第15話

自分の子供だけでなく、信者の子供たちのことまで、まるで本当の子供のように慈しんでくれたお母様。

俺たちはまるで仔猫のように、その温もりに包まれて成長したのだ。

しかし、今は子供時代の思い出に浸っている場合ではない。



増「結局、チャマの家はどうなったの?」

升「…信者のなかで1人だけ、直井家を助けてもいいと言う人間がいたんだ」

増「えっ!?何それ、誰がそんな…!」

升「それが当時は一信者に過ぎなかった、望月だ」

増「望…月…」

升「彼は、教団の資産に手を出したりはしなかった。出せなかったのかもしれないけどな。彼個人から直井の両親に、個人的な融資をしたらしい。利息も催促もほぼなし。交換条件は、ただ1つ」

増「…あぁ…」



俺は頭を抱えた。

人身売買そのものと言ってもいいような条件。

それは、当時まだ9歳の息子を、望月の手元へ渡すことだった。



升「チャマは売られたんだ。引っ越しだの転校だの、そんなものは見せかけに過ぎない」

増「じゃ、今のチャマは?」

升「ほぼ間違いなく、望月と繋がってるな」

増「…お母様の死因については?」

升「警察にも行って調べ直したけど、少なくとも他殺という印象は受けなかった。おそらく本当に事故だったんだろう」





良かった。あぁ、それは本当に良かった。

それだけはイヤだったんだ。


俺のためじゃない。

さみしがりやで人見知りで、それを隠そうとクールに振る舞う…でも本当は人一倍傷つきやすい、うちのプリンスのために。

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