第14話
その1週間後、秀ちゃんがあの居酒屋に俺を誘った。
薄い水割りでのどを潤しながら、2人で淡々と話をした。
升「わかったよ、エマさんが望月さんと会ってた理由が」
増「うん」
升「…あと、チャマとその家族が、どう関わってるのかもな」
増「うん…」
升「驚かないんだな」
増「べつに全部わかってるわけじゃないよ。けど、秀ちゃんの顔見れば…なんとなく」
升「そうか」
秀ちゃんが調べ上げた内容は、だいたい以下のようなものだった。
俺たちが小3の時、輝一会の開祖であるおばあ様が亡くなった。
2代目は、すでに彼女の一人娘である“お母様”が継いでいた。
亡くなる直前、開祖は孫である“基央”を3代目の教祖として指名していった。
直井一家が入信したのは、ちょうどその頃。
チャマが転校していったのも、その頃のことだ。
大人にとってはたいした距離でもない隣の市に、なぜわざわざ引っ越したのか。
升「一言で言えば、カネだよ」
増「輝一会の資産?」
升「ん…直井家は、親戚一同でやってた商売が傾いて、借金を抱えて困ってたんだ。引っ越したのは、夜逃げみたいなもんだった」
増「じゃ、うちとか秀ちゃんちにあった電話は…」
想像するのもイヤな話だ。
升「金の無心だろ。入信して幹部と親しくなれば、援助してもらえると思ったのかも」
増「でも、結局そんなアテもはずれたわけでしょ?いっそのことお母様に直接訴えれば、何とかしてもらえたのかもしれないけど」
升「…お母様は、優しい方だったからな」
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