第11話

「あっ、教祖様よ」


「ほら、お近づきになっておきなさい」


「教祖様、こちらに書かれているお言葉、読ませていただきました。本当に素晴らしくて…」


「私はあなた様のお言葉で生かされています。本当にありがとうございます」





曖昧に微笑んで、信者たちに囲まれる。

升、増川、チャマの3人が少し離れた場所で見守っている。


あの3人は俺を“教祖”として見ない。

いや、見てはいるけど、それは役職という意味でだ。

普段は「藤くん」であり、「藤原」であり…

あの3人は、俺を特別視しない。

1人の人間として見る。


そんなの当たり前のことじゃないのか?

それを珍しいと思うような特殊な状況。

俺は特別な人間なんかじゃないよ。





母もそう思っていたのだろうか。

身体のあまり強くなかった母は、この環境のせいで早死にしたのではないか。


いやなことばかり考えてしまう。

助けてくれよ、

誰でもいいから俺を……





直『藤くん、そろそろ戻る?』

増「ケーキあるよ。さっき差し入れでもらったやつ」

升「ここ暑いしなぁ」





…我に返った。

冬なのに妙に日差しの強い日だから、こんな妙な考えに取り憑かれたのか?

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