第10話

===藤視点===



幼稚園くらいの女の子が走り寄ってきた。

小さな手に、クローバーと白詰草を握りしめている。



「はい、教祖様!」

「…ありがとう」



なんて愛らしいんだろう。

にっこり笑って受け取った。

すると少女の後ろから、母親らしき中年の女性が、思い詰めたような表情で言葉をかけてくる。



「私にとっては、教祖様が神様です。広報紙や会報に教祖様が書かれているお言葉は、いつも私たちを助けてくださいます。あなた様がいらっしゃらなかったら、私はもしかしたら死を選んでいたかもしれません。そうしたらこの子も生まれておりませんでした。是非、これからもお導きください」



複雑な思いがした。

こういうことを言われるたびに、俺は自分の言葉の重さを感じてしまう。

俺は思ったままを書いているだけなのに、俺のことを神だとか天才だとか、やはり教祖になる人間は違うんだとか、そういう言い方をして持ち上げる…


俺は神様じゃないよ。

教祖なんて崇め奉らないで、もっとフレンドリーにしてくれていいのに。


俺は単なる“代表”であって、そんなに人間的に優れてるとかいうわけじゃない。

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