第9話
ヒロがうすく目をつぶった。
俺も、すっかり気の抜けたビールを前に、ひとりで考え込む。
おばあ様の死が老衰だったのは間違いない。
教団内の医師がきちんと診断し、記録も詳細に残されているのだ。
では、お母様…つまり2代目の教祖は?
そこがわからない。
5年前のあの日、高速道路で。
居眠り運転のトラックが原因で、玉突き事故が起こった。
数名の死者が出て、そのなかからお母様の遺体も発見された。
実はその車には、藤原も乗っていた。
しかし、彼は奇跡的に軽傷で済んだのだ。
運転手とお母様は死亡。
助手席に乗っていたのは、今回の選挙で幹部を退いたエマさん。
彼女は、事故の後遺症で今でも足を引きずって歩く。
…教祖の代替わりというのは、信者の心身に影響を与えるものだ。
そして幹部たちにとっては、教団内での自分の立場が動く時でもある。
幹部が動けば、カネも動く。
升「信者のなかで直井家と関係がある人間について、なるべく情報を集めよう。データベースではわからないことを。噂でも何でも、なるべく詳しく。…万が一、藤原に何かあってからじゃ遅い」
増「そうだね。…ひとまず小・中の同級生、あたってみるわ」
升「じゃあ俺は、直井家が引っ越したときの事情から」
こうして、2人は動き始めた。
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