第8話

チャマが側近になってから半年ほどたったある夜。

俺は、ヒロを飲みに誘った。

教団本部の近所は避け、隣の市の居酒屋まで足をのばした。




増「で、何?わざわざこんなとこまで来るからには、何か話があるんでしょ」

升「ああ」


ビールが運ばれてきたものの、2人ともまともに飲んだのは最初の一口だけ。


升「チャマのことなんだ」

増「うん」

升「“直井”だ。…覚えてるか?」

増「……少しだけ。小学校の頃、あいつが転校するまでは4人で遊んでた」

升「その先は?」

増「転校してからは……うちの母親んとこに、何回か電話があった気がする」

升「それは、直井の親父さんから?おふくろさんから?」

増「そこまではわかんないけど」

升「電話は、うちにも確かあったと思う。うちは親父が出てた」

増「カネの話?それとも、おばあ様の話?」




ヒロが突然、話の核心をついた。

俺はその鋭さに内心驚きながらも、光る目を見つめ返す。


升「…内容、おまえ知ってたのか」

増「電話の内容なんて知らない。ていうか、聞いてたとしても覚えてない。わかってるのは、うちも秀ちゃんちも昔から家族ぐるみの信者で、おばあ様やお母様…以前の教祖様たちの代から幹部と繋がってきたってことだけ」


そして幹部は、カネを動かすことが出来る。


升「…本部のデータベースで確認できた限りでは、チャマんちの両親や親戚が入信したのは、俺たちが小学3年になった年だ」

増「チャマが転校した年だね」

升「…そして、おばあ様が亡くなった年でもある」

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