疑惑

第7話

===升視点===



チャマはよく喋った。

と言っても、余計なことをベラベラと口にするわけじゃない。

俺たちがうまく言葉に出来ないようなことを、咄嗟に日本語で表現するのがうまいのだ。

フットワークも軽いし、末端の信者の訴えもきちんと聞く。

年寄りの幹部連中にも、きちんと言うべきことを言う。


いきなり教祖の側近に抜擢されたせいで、いやがらせも多少あった。

しかしその辺は、俺とヒロが出来る限りつぶした。

そうして彼は、しだいに俺ら3人以外からも認められるようになった。




直『ベースかぁ』

升「そ。まぁ無理強いはしないけど、ベースだけ打ち込みってのは嫌なんだよな」

直『うーん…とりあえず練習してみるよ』


何だかんだで、バンドにも加入してくれた。

チャマがいるようになってから、藤原は毎日楽しそうにしている。

べつに今までが特別つまらなかったわけでもないだろうけれど。




ヒロも心なしか、今までより穏やかになった。

騒ぐ役目を自然に分担するようになったせいか、最近ぽやぽや度が上がった気がする。

それはそれで、可愛くて大変よろしい。

…話がそれた。




チャマがあの役員選挙に出ているのを見たとき感じた、危機感。


おまえ、“直井”なのか?


だとしたら、どうしてここへ来た?

誰の差し金だ?

何を企んでいる?

藤原に何かするつもりじゃないだろうな。

だとしたら、黒幕は誰だ?


藤原があまりにもおまえを大切にするから、俺は言い出せなくなってしまったんだ。




「チャマは、もしかしたら…」

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