第2話

俺が9歳の時、輝一会の開祖である母方の祖母が亡くなった。

2代目はすでに母が継いでいたが、祖母は3代目として俺を指名していった。


姉が2人もいるから、てっきり女系で継ぐもんだと思ってたのに、当時の幹部連中は「基央さんなら」と承諾したらしい。

何がどう「俺なら」なのかは今もってわからないが、この団体で生まれ育った俺には、断るなどという選択肢はなかった。




そして俺が18歳の時、母が亡くなった。

俺は後を継いだ。継がざるをえなかった。

さすがに9歳の頃よりは事の重大さがわかっていたし、戸惑いはあったけれど。

それしか30万人の信者を納得させる方法がなかった。




あれから5年になる。

5年前、団体の広報紙に踊っていた“開祖の血筋だけでなくカリスマ性をも正当に受け継ぐ若きプリンス”とかいう駄文も、とっくに世間は忘れているだろう。


「あっ?」


増川が妙な声を上げた。

さっきの候補者一覧の端っこを指さし、目をパチパチさせている。


増「プリンス!これ見て!」

藤「おいプリンスってのもやめろ」

増「じゃあ教祖!」

藤「呼び捨てかよ!」

升「お前ら静かにしろよ…ヒロ、何だ。簡潔に話せ」


升がお茶をいれ直しながらぶつぶつ言ってる。

ああ、彼はいつも大変だなぁ。(←誰のせいだ)


増「これってチャマじゃない?」

藤「チャ…マ?」

升「チャマ……って、あ?小学校ん時の…?」

増「そう!直井だよ!」

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