第15話

国木田医師が再び眠りについた後、2人は院内のカフェテリアでパンをかじった。

カフェテリアには、激戦を終えた医師や看護師が休息を求めて集まっていた。



藤「俺が今回の一件の黒幕だって知ったら、俺らボコられんのかな?」

増「いや(笑)、大丈夫でしょ」



もともと藤原は、かっこいいだのクールだのと言われて、女性陣から人気が高いし。



増「てか何?“俺ら”ってことは、俺もボコられるわけ?」

藤「あったりまえ~。つか、そうなったら秀ちゃんとチャマも呼ぶね」

増「ボコられてるとこに!?」

藤「うん。ふふふふ」

増「勘弁してよ…(苦笑)」



陽光が、藤原の黒髪を透かす。

笑う目元が、増川をまっすぐ見つめる。



藤「そういや山村先生って、おまえのこと評価してくれてんだな。全然知らなかった」

増「…俺も知らなかった」

藤「あっそ」



増川も、その髪の向こうの微笑みを見る。

パンを口に運ぶ手元が、陽光と絡んで白く見えた。



増「…良かった。何とかすることが出来て」

藤「うん。…ヒロ、ありがと」

増「え?」

藤「俺だけじゃ何もできなかった。ヒロたちがいなきゃ、だめだったからさ」

増「…秀ちゃんとチャマにも言ってあげて」

藤「うん」



パンの空き袋を、少し離れた位置にあるゴミ箱へ向かってシュートする。

白衣のすそが揺れる。



藤「やーりぃ!先取!」

増「あっ、ちくしょ~……っしゃ!俺も入った!」

藤「スリーポイント!」

藤増「「いえ~~い(笑)」」



妙にご機嫌でハイタッチする2人を、周囲の人間がけげんそうに見つめる。

そんな状況には構わず、2人は、放射線科で待つ2人のもとへ戻った。

自分たちの“派閥”へ。

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