救
第8話
それから数分のうちに、GOサインを待ちかねていた救急車が何台も飛び込んできた。
戦争が始まった。
直井は、外来受付で一般患者への対応に追われた。
升は、救急対応や薬剤調達の連絡のため、電話に張り付いた。
非番の者も含めた医師や看護師が総動員され、医療チームが編成されていく。
自衛隊の災害派遣部隊、化学薬品を扱う会社や研究所、あらゆる所から救援が届いた。
それでも“無制限受け入れ”を掲げたため、負傷者は際限なく運び込まれてくる。
ベッドやソファは瞬く間にいっぱいになり、待合ロビーや廊下をはじめとするあらゆる場所に毛布が敷かれ、患者が寝かされ、院内すべてが野戦病院と化した。
増川は受け入れの最前線で救命活動にあたり、藤原は化学薬品の解毒剤を手に走り回り、山村は重い火傷を負った患者の手術に何件も立ち合った。
藤「解毒剤の在庫が尽きた!どこかにないのか!」
升「ついさっき、製薬会社に直接連絡した!日本じゅうの在庫を総ざらいして、3時間以内に送るってよ!」
藤「3時間!?…っ、ふざけんな、」
升「向こうだって無理をおして輸送してくれるんだ!必ず着くから待ってろ!」
直「待って、今電話あった!埼玉の研究所に100セットあるって!自衛隊のヘリが運んでくるから!」
増「酸素マスクは!?もう消毒して使うのも限界なんだよ!それとアルコール綿!」
升「ちっくしょう…」
物資も時間も限られた極限状態に、焦りの色が濃くなっていく。
その時、増川のポケットで緊急呼出ベルが鳴った。
また新たな負傷者が着いたのだろう。
白衣をひるがえして、救急処置室に飛び込む増川。
彼がそこで見たのは…。
増「く、国木田先生!?」
運び込まれたのは、まぎれもなく内科医長の国木田医師。
朝から連絡が取れなかった理由は、こういうことだったのか…。
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