戦後

第12話

その後、俺たちはまた全員で色々な演奏をした。

チャマが大陸帰りの元楽士ということで、皮肉にもバンドの知名度を上げる広告塔の役割を果たしてくれた。


西洋の音楽が解禁になり、日本の歌謡曲や流行歌もどんどん出てくるようになった。




これまでの地道な活動が実ったのか、俺たちの演奏は徐々にラジオで放送されるようになっていった。

俺たちを“格好いい”と言ってくれる人が、近所の子供たち以外にもいたわけだ。世間って面白いなぁと思う。


それでも、俺たちの絆は何も変わらない。

俺たちはこれからも歌い、演奏し、4人であり続けるだろう。






一度だけ、チャマが“戦場”について語ってくれたことがあった。


目の前で味方が死に、敵が死に、民間人が死に、まさに九死に一生を得たチャマ。

楽士とはいえ、いちおう武装訓練は受けていたから、銃や剣の重さもわかっている。


彼は、微笑んでこう言ったのだ。




――つらかったよ。戦場は本当に地獄だったよ。

――死んじゃう時って、大人も子供も、男も女も関係ないんだ。

――でも、その瞬間に音楽を聞かせると、笑ってくれる人がいたんだ。

――死に顔が笑顔なんだよ…

――これって俺のせいなの?それとも、俺のおかげだって思っていいの?




俺は彼を黙って抱きしめることしか出来なかった。

「帰ってきてくれてありがとう」、そう言うことしか出来なかった。

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