第11話

明け方の増川家の一室で、久々に4人で話をした。

チャマは昨日の時点で日本に戻っており、列車が着く時間をヒロに連絡したらしい。



藤「それをなんで升には伝えて、俺に言わないんだよ」

増「……怖くて言えなかった」

藤「は?何が?」


升「だからさ、フジ自身は自覚してなかったみたいだけどさ、昨日までのおまえはかなり精神的にやばい感じに見えたんだよ」

増「そう」


升「あんな状態でいきなり“チャマが無事に帰ってくるぞ”なんて言ってみろ、逆効果でそのまま壊れて戻ってこなくなるんじゃないかと思うくらいに、だ」

藤「……………」



憮然とするが、なんとなく否定できない俺もいる。

ってことは、年寄り連中の噂話も、あながち大間違いではなかったのかも…?

つーか、どうしたんだろう俺…すごい眠い…



直『あれ、藤くん寝ちゃってる』

升「寝たか。そりゃ良かった」

直『なんで?』


増「いや、最近さ、夜いきなり外に出たりしてたみたいなんだよ。ほとんど眠らないし、飯食う量も減ったっておばさんが言ってたし」

直『減ったぁ!?あれ以上減らす余地あったの?』


増「あったんでしょ」

升「だから体重も落ちたんだろ」

直『うーわー…もう、何この人…』






3人の喋る声を聞きながら、俺は久々に平和なまどろみに身を委ねた。


そういえば、今日もどっかで演奏依頼があったよな。

チャマも見に来るだけでもいいから、来てくれないかな。今日はきっと失敗しないから。


そっと布団をかけてくれたのは、チャマだろうか。増川かもしれない。

まぁいいか…これからもこの4人でいられるなら、何でも…

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