第10話

戦地から帰ってきたばかりなのに、どうしてこんなに溌剌としているのだろう。

どうして、俺が喜ぶことばかり言ってくれるのだろう。



直『…ねぇ、なんか藤くん痩せた…?』

藤「え?あー、どうかな…」



どうだろう。そう言われてみれば、最近ちょっと体重落ちたかも…?

と、そこにもう一つの声が響いた。



増「おーい、そろそろ俺たちも出てって平気?」

直『あっ、ヒロ、うん大丈夫!秀ちゃんも!』

藤「えっ?」



ガサガサと音を立てて、茂みから升と増川が顔をのぞかせた。

なんだってこんな夜中に、こんな所にいるんだ?

そう言おうとして、それはチャマについても同じだということに今さら気がつく。



藤「なんで3人ともこんなとこ、こんな時間にいんの…」

直『気づくの遅いよ』

升「チャマから電話があったんだよ、ヒロの家に。帰ってくるって」

藤「え。…あー」



そうだ。増川家は、この辺じゃ珍しく電話が引かれてるんだ。

これまでの親しさから考えても、チャマが無事に帰ってきたら、まずヒロんとこに連絡する可能性がいちばん高いだろう。



増「ほんと、気づくの遅いね。らしくないねぇ」

升「もう大丈夫だろ。チャマが帰ってきたし」

直『へ?何それ。藤くん、俺がいない間どうだったわけ?』

増「それがもう、かなりイッちゃっててさ」


藤「イッちゃってるって何だよ。俺は別に…」

升「まぁまぁ。とりあえずヒロ、おまえんち行っていいか」

直『そうだよねー、こんな道ばたでいつまでも喋ってんのもね』

増「それは決定事項なの…?」

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