第9話

聞きたくて聞きたくてどうしようもなかった声が、突然聞こえた。

ついに俺は頭がおかしくなったのか、そう疑った。でも、そこには確かに。



直『どーしたのー。次、藤くんのセリフだよ』



チャマの声だ。

俺の名前を呼ぶ声だ。



直『ねぇ、“わからないけど、これからわかりたいと思ってる”って言ってくれないの?』



俺をこの世につなぎ止める、光だ。



藤「チャマ…」



やっと喉から出てきたのは、彼を呼ぶかすれ声。

俺の心を生かす、かけがえのない希望。



直『藤くん、ただいま!』








自転車を放り出して、彼を抱きしめに走った。

今まで俺はどうやって呼吸していたんだっけ?だって俺は今、こんなに楽に息が出来てる。

こいつのいない間、俺はどうやって生きてたんだ?



藤「“わかりたいと思ってる”なんて、傲慢だべ…」

直『そんなことないよ。だって俺は藤くんのこと知りたい、もっと知りたい。ってことは、俺も傲慢なの?ねぇ、傲慢な俺は嫌い?』

藤「そんな…、そんなことは…」


直『藤くんは俺のこと知りたいと思ってくれないの?俺、藤くんになら何でも言いたいよ。自分のこと、何でもわかっててほしいよ。それじゃダメなの?』

藤「チャマ!チャマ…!!」

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