第8話
…けどさ、チャマ。俺、最近ちょっと疲れてるみたいなんだ。
今夜みたいにうまく眠れない日もある。演奏の途中で、妙に失敗する回数も増えた。
なぁ、そろそろ帰ってこないか?
升も増川もいるけど、やっぱりもう1人いてくれないと、俺たちは完全じゃないんだよ。
また必ず会おうって言ったじゃん。
戦争は終わったんだから、もう帰ってこれるだろ?
気がついたら、駅へ向かう道にいた。
なんとなく自転車にまたがった。
初夏のあの日、チャマを乗せて走った道。
もう少し行くと、坂道が見えてくるはず。
なぁ、また後ろに乗せてやるからさ、今度こそ時間を気にしないで、川縁で喋ろう?
そうだ、坂道は今度はおまえがこいでみろよ。あれすんげぇキツいんだから。
…あの時話してた、どうしようもない青くさい議論も、続きをしよう。
早くしてくれないと、おまえの顔も、声も、どんどん抜けてっちまう。
思い出すなんて嫌だ。怖い。どうしようもなく怖い。
おまえがいてくれないと、俺は…
藤「頼むよ…このままじゃおまえのこと、どんどんわからなくなっちまうよ」
思わず自転車を止めて、口に出してしまった。その途端。
直『“どんなに近い人間でも、わかんないことはあるよ”』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます