第13話

チャマ自身も、本気で一度死にかけたらしい。

目の前で敵の砲弾が炸裂した、と言っていた。


でもその時、とっさに抱きしめたあの録音リールに破片が当たって、チャマ自身は無事だったんだって。


お守りをダメにしてしまったと言ってチャマはうなだれるが、そんなの全然平気だ。

増川だって、「それでチャマの命が救えたなら本望!」と、かなり喜んでいる。




あの入場券は結局使われないままとなった。

これから先、4人のうちの誰かを見送るためにこれを使うことがあるのだろうか?

なければそれでいいし、あったとしてももう絶望はしない。



直『またみんなで演奏したかったから、俺は帰ってこれたんだよ』



チャマは冗談めかして笑うが、案外それって本当のところじゃないかと思う。

人を生かす理由なんて、他人からすると意外に「えっ、そんなこと?」と言われるようなものだろうから。


たとえ今後、離ればなれになることがあったとしても、必ずまた会える。

それは願いでも祈りでもない、確信だ。これからもずっと、俺たちは4人でいる。








直『ほら藤くん、もっと頑張って!何してんの、体力落ちたんじゃないの!?』

藤「…くっ…はぁ、…おまぇえ…、自分で、こいでみろよ……!」

直『~~~♪♪♪』

増「おーい、2人とも早く上がってきなよー」

升「すっげぇ朝焼けだぞ!」






錆び付いた車輪で、あの坂道を上り続ける。












【了】

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