第44話 本圀寺の変・後編

 京の街に吹きすさぶ冷たい風と雪。

 夜が更ける中、三好三人衆の軍勢が本圀寺へと迫り、重厚な門の前に立ちはだかった。


「義昭を打倒し、京を手中に収めるのだ!」


 三好長逸の甲高い声が寒風に乗り響き渡る。


「総門を破壊せよ、その次は赤門だ!」


 三好康長が続け、軍勢が動いた。


 雪が激しさを増す中、岩成友通も無言で首肯し、最初の門である総門に迫る。


 宗則は冷静に状況を見極め、指示を飛ばした。


「敵が迫ってくるぞ、全力で総門を守れ!私を信じ、京を守り抜くのだ!」


 兵士たちは飛び道具を構え、総門を必死に守ろうと待ち構えた。冷たい手で弓矢や鉄砲を構える姿は壮絶だった。


 三好軍が総門に襲いかかる中、宗則は冷静な指示を出した。


「寒さを利用し敵を挫け!敵を総門で止めるのだ!」


 兵士たちは境内のため池の水を桶に汲み、三好軍に浴びせかける。


 冷水が敵の体を凍りつかせ、動きを鈍らせた。さらに凍結縄が敵を絡まり、悲鳴が上がる。


 雪に混じった血が地面を赤く染め、激しい戦闘が続く。

 それでも敵の圧力に耐えきれず、遂に総門は破壊された。

 三好軍も多くの犠牲を払いながら、総門を突破することとなる。

 しかし、敵の疲労も顕著であり、この日は撤退を余儀なくされた。


 その夜、宗則は兵士たちに温かい酒を振る舞い、士気を高めることにした。


「この酒を飲んで、さらに力を振り絞れ!」


 宗則が激励し、兵士たちは酒を飲み干し、体を温めながら翌日の戦いに備えた。


「寒さに負けず、京を守るのだ!」


 兵士たちは再び団結し、心を一つにした。


 一方、三好軍の陣営では寒さ対策が甘く、浴びせられた冷水によって多くの兵士が震え、低体温症や凍傷で離脱する者が続出していた。

 敵軍の疲労は深まり、士気も低下していた。


 翌日、三好軍は再び攻撃を開始し、次の標的である赤門に襲いかかる。


「赤門を守れ、敵を入れさせるな!」


 宗則が叫び、兵士たちは赤門に移動して防衛を続けた。


 雪が吹きすさぶ中、兵士たちは赤門で耐えた。

 矢が空を切り、鉄砲の煙が渦を巻く。

 冷気が肌を刺し、視界が悪くなる中、兵士たちは必死に矢を放ち続けた。

 敵の圧力はさらに強まるが、兵士たちは心を一つにして門を守り続けた。


「この門を渡すわけにはいかぬ!」


 攻防は長引き、激しい戦いの末に、ついに赤門も破壊された。

 三好軍は次の防衛線である冠木門に向かう。


 最終防衛地点である冠木門に向けて、三好軍が襲ってくる。


「冠木門を死守しろ、この門を破らせるな!」


宗則が最後の力を振り絞り、叫ぶ。


 兵士たちは冠木門の前で最後の防衛線を張り、必死に戦った。

 雪が視界を奪い、凍てつく風が容赦なく彼らを打った。

 冠木門を取り囲む壁には矢狭間があり、兵士たちはそこから矢を放ち続けた。


「矢狭間から一斉射撃だ!敵を止めろ!」


 宗則の指示に従い、兵士たちは矢狭間から矢を放ち、三好軍の先鋒を撃退した。


「宗則、この京の未来はお前に託す。私は御父殿の信頼を裏切らないよう、お前を見守り、信じるぞ。」


 義昭も本殿から弓を射りつつ、固き決意を胸に抱いて宗則に言葉を送る。


 冠木門が破られそうなその時、遠くから救援の声が響いた。

 義昭の要請を受けた援軍、細川藤孝や北河内の三好義継、摂津の池田・伊丹衆、さらには近江から駆けつけた柴田隼人の隊が到着した。


「援軍が到着した!反撃する時は今ぞ!!!」


 宗則が大声で叫ぶと、兵士たちは士気を盛り上げ、連携して反撃を開始した。


 三好軍は退路を断たれ、混乱の中で撤退を余儀なくされた。援軍との挟撃に苦しむ三好三人衆の軍勢は全面的に退却せざるを得なかった。


 宗則が遂に勝利を確信し、大声で告げた。


「京は守られた!」


 兵士たちは歓喜と共に声を上げた。



 戦闘の終息と共に、夜が更け、本圀寺の中庭に静寂が戻ってきた。雪が舞い戻り、義昭と宗則は感極まりながら平和を誓い合った。


「宗則、お前がいたからこそ、この京は守られた。御父様と共に、平和な世を築こう。」


 義昭の声には深い感謝と揺るぎない信頼が込められていた。


「はい、義昭様。これからも全力を尽くし、平和な世を目指して励みます。」宗則もまた、固い決意を胸に抱きしめた。


続く

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