第40話 星の予兆と計略

 1568年12月、京の街は寒さとともにその緊張感を増していた。

 信長が京を離れる準備を進める中、宗則は信長に京の情勢を正確に伝え、兵を残してもらうための交渉を行う必要があった。


 信長は冷静な表情で決断を下しつつあった。

 京を離れ、次なる目標に進む決意を胸に秘めている。

 その姿は毅然としており、周囲の武将たちに前向きな影響を与えていた。


 宗則は信長の元に急ぎ、冷静な表情で報告を行う。


「信長様、星の動きと風向きを読み取りました。その結果、京に不穏な動きが出る兆候があります。」


 宗則は深い呼吸をして、信長の意識を引き寄せた。


 信長は一瞬の沈黙を保ち、その後冷静な声で尋ねた。


「具体的には何の兆候だ?証拠があるのか?」


 宗則は冷静に答える。


「天文を読んだ結果と周辺状況を鑑みた軍師としての私の意見ですが、三好三人衆が京都を襲撃する意図を感じ取れます。」


 信長の表情には微かに疑念が浮かんでいたが、その瞳には鋭い判断力が輝いていた。ここで周囲の武将たちが声を上げ始めた。


「陰陽術など信じ難い!予感や直感で兵を残すなど愚かしいことだ!」


 武将の一人が強く言い放った。


「宗則には信長様の信頼が厚い。その意見は無視できない。」


 柴田勝家が宗則を擁護した。


 別の武将が凄んだ。


「その言葉に責任を持つ覚悟はあるのか?言葉通りなら京に兵を残してもよい。しかし、誤りならば、どうなるか、覚悟はあろうな?」


 宗則は力強く答える。


「はい、その責任は私が負います。また、京の守りを固めるための計略もすでに準備しております。」


 宗則の声には確固たる信念と覚悟が感じられた。


 信長の眉が微かに持ち上がり、彼の表情には少しばかりの和やかさが戻った。


「それならばその計略を示せ。」


 宗則は信長に計略を説明しながら、地図を広げて場所を指し示した。


「まず、本圀寺を都における最終防衛拠点として位置付けます。本圀寺は京都の東山のふもとに位置し、北東の要所で、戦略的に重要な要地です。寺壁の防御を強化し、中庭には攻撃側に不利な地形を利用して飛び道具を配置します。また、冬の寒さを利用した戦術として、冷え込む夜に敵を無力化するための罠も設けます。」


 宗則はさらに続けた。

 

「市中には巡回兵を増やし、敵が侵入する経路を完全に封鎖します。そして、陰陽道の力を用いて、予測と直感を総合的に活用し、防衛の強化を図ります。」


 信長は考え込み、深く息を吐いた。


「よかろう、宗則。お前の計略に従い、兵を残す。そして、お前が京の守りを率いよ。これはお前にとって大きな機会だ。」


信長の視線は鋭いものの、信頼を表していた。


「だが、忘れるな。お前の責任は重大だ。お前の判断が今後の未来を決めるのだ。」


 信長の声には重みがあり、その言葉が宗則の心に深く刻まれた。


宗則は深く頷き、


「この任を背負い、全力を尽くします」


と誓いの言葉を述べ、その信念を胸に刻んだ。


 信長が去った後、宗則は義昭の元に報告に向かった。

 義昭は新たな将軍としての職務に全身全霊で臨んでおり、その表情には緊張感が漂っていた。


「義昭様、信長様の指示を受け、京の守りを任されました。共に都を守り抜きましょう」


 宗則は深い敬意を持って告げた。


 義昭は冷静な表情で応じ、


「宗則、お前の力が頼りだ。御父殿の信頼を裏切らないよう、共に全力を尽くそうぞ」


 宗則は義昭の言葉に深く頷いた。この瞬間、義昭との協力が始まり、新たなる試練に立ち向かう決意が固まった。


 冷たい風が肌を刺す中、宗則は一人で星空を見上げながら、これまでの決断と責任を思い返していた。


「戦乱の世を生き抜き、平和な世の到来を願う。信長様と義昭様のお力添えを受け、全力を尽くすのだ。」


 彼の心には新たな力強さと覚悟が戻り、次なる試練に向けての決意が静かに燃え上がっていた。

 それは新たな時代を迎えるための重要な一歩であり、宗則の運命が大きく動き出す瞬間であった。


続く

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