第33話 戦友の誓い、終わりなき道

 戦場の夜。宗則と隼人は、ひときわ静かな一隅で向き合っていた。

 戦の余韻が残る中、二人の間には言葉を交わす必要がなかった。

 戦場での血気と緊張が収まり、ただしばしの静けさが流れていた。


 隼人が最初に口を開いた。


「お前、すごかったな。あの豪雨の中、全て計算通りだった。」


 宗則は軽く笑みを浮かべ、視線を空に向けた。


「いや、俺だけじゃない。お前も、あの先陣を切ったことが決定的だった。勝家様の命令を守りつつ、あの勢いで突入できたからこそだ」


 隼人は肩をすくめ、少し恥ずかしそうに言った。


「まあ、俺はただ突っ込んだだけだ。でも、あの時の豪雨、あれがあったからこそ、敵は混乱してた」


「そうだな。天候が味方してくれた。ただ、それに合わせてタイミングを見極めるのが俺の仕事だった。信長様も言ってたろう、戦は計画通りに進むことが大事だと。」


 隼人はうなずきながらも、少し真剣な表情を見せた。


「でも、お前、もうかなり注目されてるだろうな。信長様も俺たちの活躍を見て、確実に評価してる」


「まあな」


 宗則は少し考え込むように言った。


「ただ、それで満足してるわけじゃない。」


 隼人が不思議そうに顔を覗き込んだ。


「満足してない?お前、戦で結果を出しただろ?」


「結果は出たさ。でも、俺が望んでるのは、もっと上の評価だ。」


 宗則は一瞬、思索に沈んだ後に言葉を続けた。


「戦の後、勝家様や信長様の評価はわかってる。だが、俺が目指すのは、それだけじゃない。」


 隼人は無言で頷き、しばしの沈黙が続いた。


 その後、宗則は隼人を見つめ、続けた。


「だが、勝家様の評価は大きかったな。お前の槍さばき、見事だった。あれだけ速く突入できるとは思わなかった。」


 隼人は照れ笑いを浮かべながら、


「まあ、俺にできることはそれくらいだ。」


と答えた。


 宗則は少し微笑んで、


「お前のように、戦の中で自分の役割を果たすのも大事だな。」


と続けた。


 その後、戦後の整理が進む中、宗則と隼人は再び一緒に行動することになった。

 二人の間には戦友としての絆が深まり、今後の戦いに向けての決意が固まっていった。


 夜が深まる中、静かな夜風が二人を包み込む。

 信長軍は観音寺城を完全に制圧し、勝家軍も安堵の表情を浮かべていたが、宗則の心の中には、次なる目標に向かう意志が固まっていた。


続く

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