第31話 進軍の足場

 信長の上洛がいよいよ近づく中、各軍が次々と動き出していた。

 秀吉の軍は、上洛のための準備を進めながらも、手柄を求めて砦攻略を進めていた。

 一方、勝家は箕作城での戦であり、遠くから勝ち鬨が聞こえてきた。


 信長の上洛を支援するためには、各軍の迅速な動きが必要不可欠だった。

 秀吉は


「箕作城のような大規模な城を落とすことよりも、信長様の前進を支えるべく手堅い戦を進めなければならない」


と感じていた。


 戦局の進展に焦りを感じつつ、彼は手柄を求める気持ちを抑えながらも、


「信長様の上洛が迅速に進むために、今は冷静に戦うべきだ」


と自らに言い聞かせていた。


 そのため、秀吉の軍は上洛に向けて重要な拠点となる砦を攻略し、進軍を支える役割を担っていた。

 これらの砦は、上洛に向けた補給路を確保し、信長の兵を円滑に進ませるために必要不可欠なものであった。

 秀吉は、この戦の意義を深く理解し、焦りや不安を胸に秘めながら、兵を率いて進んでいった。


 秀吉は、まず半兵衛に策を練らせ、周辺の村々を味方につけ、その補給路を確保することから始めた。


「砦の制圧だけでは意味がない」


 と半兵衛は語り、さらに周辺の村々を徹底的に管理することで、補給を断つことなく戦を進めることに成功した。


 秀吉はその手腕に感心しつつ、


「これで信長様の上洛も順調に進むだろう」


と確信していた。


 しかし、秀吉自身も次第に緊張を感じていた。

 数日後、半兵衛が村々を確実に支配し、砦の制圧に成功する報告が入ると、彼はその速さに満足しつつも、


「これだけ速く進めるのは、恐らく勝家の進軍速度に対する意識があるからだろう」


と自らの競争心も意識していた。


 その後、次々と砦が制圧され、兵たちは着実に進軍する準備を整えた。

 秀吉の軍は巧妙な戦術と速さで、周囲の砦を一つ一つ攻略していき、確実に上洛に向けての足場を築いていった。

 その際、進軍の過程で予想外の抵抗を受けることもあった。

 砦の守備が意外に強固で、当初の予定よりも時間がかかることも。

 しかし、秀吉はそのたびに冷静に指揮をとり、損害を最小限に抑えることに成功した。


 一方、勝家は箕作城を落としたものの、秀吉が着実に進軍を支援し、砦を制圧していく報告が届くと心中で焦りを感じていた。

 勝家は自らの手柄を求めて必死に戦いを進め、秀吉と同じ支援のための手柄を手に入れようとしていたが、その競争心がかえって戦局を乱すことを恐れていた。


「秀吉がこれほど早く砦を攻略するとは思わなかった。あの男はどこまで手を広げるつもりか」


と勝家は、戦の進展に対する不安を抱いていた。

 勝家の心中では、手柄を得るための焦りが次第に募っていき、部下に対してもその焦りが伝染しているのが感じられた。

 しかし、その焦りが新たな戦略を生むことを期待し、勝家は次なる行動を早急に考えていた。


 戦局が進む中で、宗則は信長への報告書をまとめながら、秀吉と勝家の行動を冷静に観察していた。

 彼の役目は、戦局の進展だけでなく、両者の心理戦を見極め、信長に伝えることだった。


「両者とも、信長に対する忠誠心から動いているが、同時に出世欲や競争心も強く感じる。どちらも早急に結果を出したいと思っているだろう」


 と宗則は冷静に分析した。

 その後、宗則は、両者の動向が信長の上洛にどのように影響を与えるかを考慮しつつ、報告書を仕上げていった。


 その中で、宗則はあることに気がついた。

 秀吉と勝家は、表向きは忠誠心から信長を支えているように見えるが、どちらも自分の手柄を重視しており、信長が上洛する際にどちらがどれだけ成果を上げたかが重要な争点となるだろうと感じた。

 この競争心が、彼らの行動にどれだけ影響を与えているのか、それを見極めることが自分の役割だと感じていた。


 秀吉の軍は、砦を次々と制圧し、その勢いで進軍の準備を整えた。

 信長の上洛に向けた道筋が整いつつあり、秀吉はその手柄を報告する準備を始めた。


「信長様の上洛に向けて、一歩前進した」


と秀吉は冷静に言ったが、その目には満足感がにじんでいた。


 勝家もまた、箕作城を落としたことで着実に成果を出していた。

 しかし、彼の心の中では、秀吉が急速に進行する中で自分の手柄を重視する気持ちと、次なる戦に向けた焦りが交錯していた。


 信長の上洛がいよいよ近づく中、それぞれが自らの手柄を求めて戦い続ける中、宗則はその進行を見守り、報告書を仕上げていった。

 彼は、両者の心理戦を見極めつつ、信長の上洛に向けての戦局がどのように展開するのかを注意深く観察し続けた。


続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る