第27話 上洛への決意
柴田家の屋敷に移り住んでから、数か月が経った。
宗則は、勝家の軍師として、日々、戦の準備に追われていた。
信長は、天下統一を目指し、着実に勢力を拡大していた。
永禄11年(1568年)、信長はついに上洛を決意する。
その目的は、将軍・足利義昭を奉じて、京の都を掌握し、自らの権威を高めることにあった。
信長は、上洛に先立ち、家臣たちを集め、軍議を開いた。
「…皆の者、わしは、上洛を決意した」
信長は、力強い声で、宣言した。その声には決意が宿っており、部屋の空気が一瞬で引き締まる。
「…将軍・足利義昭様を奉じて、京の都へ入り、天下に号令する!」
家臣たちは、信長の言葉に、興奮を隠せない様子だった。誰もが信長の指導力に引き込まれ、上洛を果たすことで天下に名を轟かせる瞬間を夢見ていた。
「…しかし、上洛への道は、決して平坦ではない」
信長は、続けた。声を低くし、部屋の空気を再び引き締める。
「…近江の浅井長政、越前の朝倉義景は、義昭様を奉じて上洛するわしに、敵対するであろう」
「…恐れることはありません! 我らが、信長様のために、道を切り開きましょう!」
柴田勝家は、力強く言った。その言葉には、信長に対する絶対的な忠誠がにじんでいた。
「…うむ、頼むぞ、権六」
信長は、勝家に、期待を込めた眼差しを向けた。
「…宗則、そなたはどう思う?」
信長は、宗則に、意見を求めた。その視線の中に、信頼が込められているのが感じられる。
「…浅井、朝倉は、共に、強敵です。特に、浅井長政は、信長様の妹君・お市の方を娶り、同盟関係にありますが、朝倉家とは、古くからの主従関係にあります。信長様の上洛を阻むため、朝倉義景の要請に応じ、裏切る可能性は高いでしょう」
宗則は、冷静に答えた。その言葉には鋭い洞察が込められている。
「…朝倉義景は、名門でありながら、保守的で、現状維持に固執する人物です。信長様のような、革新的な人物を、危険視しているでしょう。しかし、彼の保守的な姿勢が、我らの戦の有利な状況を作ることになります。義景が動かなければ、信長様の勝利は近いでしょう」
宗則は、さらに続けた。彼の眼差しは鋭く、すでに次の戦の勝利を見越しているかのようだった。
「…浅井長政は、若くして北近江を平定した、優れた武将です。しかし、朝倉家への恩義と、信長様との同盟の間で、苦悩しているはずです。そこでこそ、信長様が長政の内面に入り込む余地があります。義景が動くことで、長政もその動きに従わざるを得ないでしょう」
宗則は、自信に満ちた口調で言った。その言葉の一つ一つが、戦局を有利に導くための鍵であることが明確だった。
「…良い。宗則、そなたの知恵を、わしに貸せ」
信長は、宗則に、期待を込めた眼差しを向けた。その眼差しには、信頼以上の感情が込められているように見えた。
「…はっ!」
宗則は、信長の言葉に、力強く答えた。その表情には決意が浮かんでいる。
こうして、宗則は、信長の上洛という、歴史的な大事業に、深く関わることになった。
(続く)
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