第16話 二条派の失脚
春蘭は蓮の言葉を静かに受け止めていた。
二条派の失脚という案に、心の中で葛藤が巻き起こる。
その背後には、父・春蘭の誼があることを否応なく思い出させる。
蓮が言った。
「二条派を失脚させる時が来た。近衛家の勢力を強化するためには、二条の影響力を排除しなければならない。」
春蘭の目がわずかに細められた。
彼女の父が二条尹房と深い関係を持っていたことは、知っての通りであり、蓮が言うように二条派を排除するという選択肢を受け入れることは容易ではなかった。
だが、近衛家の未来を考えたとき、蓮の言葉に無視することはできない。
「失脚させる…とは、どういうこと?」
春蘭は心の中で不安を抱えつつ、冷静に問い返した。
蓮はその目を春蘭に向け、冷徹な決意を示す。
「二条派は、近衛家の勢力拡大を妨げている。近衛前久殿が手を貸してくれれば、計画はすぐに実行できる。そのためには、あなたの力が必要だ。」
春蘭は言葉を飲み込み、静かに考えた。
父親が二条尹房と繋がりがあったことは、避けて通れない事実であり、それでも近衛家のために動かなければならないという現実が重くのしかかる。
「私の力が…必要だと?」
春蘭は少しだけ言葉を絞り出す。
蓮は頷くと、その微笑みにさらに冷徹さを含ませた。
「叔母上の父親が二条家と懇意にしていることは知っている。しかし、今は近衛家の未来を考えなければならない。そのためには、二条を排除し、近衛家を強固なものにする必要がある。あなたの力を貸してほしい。」
その冷徹な言葉が、春蘭の心にしっかりと刻まれる。
彼女が二条尹房との繋がりを断つことができるのか、あるいはその絆が彼女を縛り続けるのか。
だが、蓮の冷徹な態度に、春蘭はその決断を下さねばならないと感じる。
その時、宗則が静かに口を開いた。
「蓮殿、私に知恵を貸すという話でしたな。ならば、私はこの場をどう進めるか、助言をしてもよいかと思います。」
蓮は少し驚いたように宗則を見つめ、そしてすぐに答える。
「もちろん。あなたの知恵があれば、この計画もさらに強固なものになるだろう。今、私が考えているのは、二条派が抱える秘密を暴くことだ。そのためには、まず情報を集め、その証拠を握ることが必要だ。」
宗則はうなずきながら続けた。
「二条家が隠している秘密を暴けば、彼らの影響力は一気に失われます。しかし、証拠を掴むことには慎重に動かなければなりません」
「その通りだ。」
蓮は頷きながら言った。
「情報を集め、確実に証拠を掴んでから動くべきだ。急いで暴露するようなことがあれば、それが逆に不利になる。」
春蘭はその会話を聞きながら、自分がどれほどの犠牲を払う覚悟を持っているか、再び考え直していた。
もし二条派が失脚すれば、彼女は父との絆を切り離さなければならない。
だが、近衛家の未来を思えば、もう一歩踏み出さなければならないのだと感じていた。
「…分かりました。」
春蘭はついに決意を口にした。
「私は協力します。しかし、どんな結果が待っていても、私は最後まで自分の選んだ道を歩む覚悟です。」
蓮は満足げに微笑んだ。
「その決断、賢明だ。では、まずは二条家に関する情報を収集し、行動に移す準備を整えよう。」
宗則も静かに頷き、計画が着実に進んでいくことを感じ取った。
次第に、二条派に対する動きが本格化し、計画は着実に進展を見せ始めていた。
春蘭は目を閉じ、深く息を吐いた。
この決断がもたらす結果が何であれ、彼女は自分の選んだ道を進むしかない。
家族との絆と、近衛家の未来、どちらも選ばなければならない。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます