第9話 秘められた思惑
花山 春蘭の屋敷の一室。
宗則は、春蘭の向かいに座り、白雲斎から託された書状を手渡した。
春蘭は、書状を受け取ると、ゆっくりと目を通した。
その表情は、読み進めるにつれて、厳しさを増していった。
「…白雲斎様は、あなたに、何を託されたのですか?」
春蘭は、書状を読み終えると、宗則の目をまっすぐに見つめた。
その視線は、鋭く、宗則の心を見透かすようだった。
宗則は、春蘭の威圧感に押されながらも、答えた。
「…師匠は、私に、この乱世を生き抜く術を、教えてくださいました。そして、この京の都で、私の力を試したいと…」
「乱世を生き抜く術…ですか」
春蘭は、意味深な表情で、呟いた。
「…白雲斎様は、なぜ、あなたを、この都へ送られたのでしょうね…?」
春蘭の言葉は、静かだったが、宗則の心に、鋭く突き刺さった。
(…なぜ、師匠は、私を、この都へ…?)
宗則は、白雲斎の真意を、測りかねていた。
白雲斎は、宗則に、京の都で、春蘭を頼るようにと言った。
しかし、なぜ、春蘭なのか?
春蘭は、藤原家で、陰陽師として、高い地位にあるとはいえ、一介の武士である宗則にとって、あまりにも遠い存在だった。
(…師匠は、一体、何を考えているのだろうか…?)
宗則は、不安な気持ちを抱えながらも、春蘭に尋ねた。
「…花山様は、師匠から、私のことについて、何か聞いておられますか?」
春蘭は、宗則の質問に、答える代わりに、静かに微笑んだ。
その笑みは、美しく、妖艶だったが、どこか冷たさを感じさせた。
「…宗則様、あなたは、知っていますか? この京の都は、今、大きな変革期を迎えていることを…」
春蘭は、静かに語り始めた。
「…朝廷では、権力を巡る争いが、激化しています。そして、地方では、戦国大名たちが、天下統一を目指し、互いに領土を奪い合っています」
「…はい」
宗則は、頷いた。
「…この乱世を生き抜くためには、力が必要です。武力、財力、そして…知力」
春蘭は、宗則の目をまっすぐに見つめた。
「…白雲斎様は、あなたに、知力を授けられました。そして、その知力を、この京の都で、試せと…」
「…しかし、私は、まだ、未熟者です。私に、一体、何ができるというのでしょうか…?」
宗則は、自信なさげに言った。
「…それは、これから、あなたが決めることです」
春蘭は、意味深な言葉を残すと、立ち上がった。
「…今日は、ゆっくりとお休みください。明日、改めて、お話しましょう」
春蘭は、そう言うと、部屋を出て行った。
宗則は、一人、部屋に残された。
彼は、春蘭の言葉の意味を、考えようとしたが、頭の中は、混乱していた。
(…私は、一体、この都で、何をすればいいのだろうか…?)
宗則は、不安と期待が入り混じった、複雑な気持ちを抱えながら、眠りについた。
(続く)
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