第2話 山賊のバイトリーダー

2話 山賊のバイト


「コロラッタ、ソイツが荷運び用のニー・モービルカに居たヤツか?」


 助手席に縛り付けられた男を乗せてデカい荷運び用のモービルカがゆっくりと村の広場に留まる。


「全部で四人、か。ガギュウ!コイツらのトラックタは使えそうか?」


 俺は( ´∀`)bグッ!と親指を立てて頷く。コロラッタは一目散にスクラップの山に突撃していった。


「で、アンタはどこの誰だ?そんでなんでそんなに耳が早い?坊っちゃん達がくたばったのは昨日の夜で俺達もついさっき知ったんだが?」


「早く解放しろよ土臭い田舎者が!!お前達が不当に野菜や肉の値段を釣り上げてるから俺達は仕方なく自分で食い物を取りに来ただけなんだよ!クソッ!」


「ケーサツ呼んでも良いんだぞ!ケーサツ!!それに俺達にこんな事してタダで済むと思ってんのか!!」


「俺のニー・モービルカを返せよ!!アレはやっと手に入れた俺の相棒なんだ!!」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいなんでもしますから許して下さい実家にだけは連絡しないで下さいお願いしますお願いしますウチに帰りたくない帰りたくない」


 う〜む、コイツらのモラルゥー


「ケーサツは有能だが、なりたがる奴が少なくて一部の人間を守るのに常に出払ってるって知ってんだろ?何がケーサツ呼べだよ………変わりに置かれた領主のガギュウだ。てめぇらの荷物は没収。てめぇら4人は野菜と一緒にテラリムに出荷だな」


「領主は死んだハズだろ!語りは重罪だぞ!」


「遠縁の親戚だ。居なくなったから臨時でやる事になった」


 叫び声を上げてジタバタと暴れる3人とブルブル震えている1人。こっちの1人は事情がありそうだけど下手に手を差し伸べたら2匹目のドジョウ狙う奴が湧くとも限らないしどうするか……


「なにを迷ってる。みんな都会に出て行って村には女の子が居ないんだ。1人ぐらい都会から貰ってもバチは当たるまいよ(男の子は女の子には手を差し伸べるモンだ。何を迷ってやがる)」


 エケベリのおっちゃん!!本音と建前が逆だよそれじゃ!


「はっはひっ!な、なんでもします炊事洗濯便所掃除!そ、それに領主サマが欲しいならこの身体………」


「バカ野郎!そういうのは好きな人にとっとけ!」


「それより領主不在と聞きつけて乗り込んで来るバカがコイツらだけとは限らないからな!防衛網を敷くぞ!エケベリのおっちゃん!皆は?!」


「既に、」「こっちもだ」「掻き回す奴が居ないぶんやりやすい」


 わぁ、地元の皆様が頼もしい。一息つくやいなや、再び耳障りなサイレンの音が響く。


「クソッ!とりあえず行ってくる!」



─────────


「ヒャッハー!ここの領主が死んだんだってェ?だったら奪い放題だよなぁ!使わなくなった金属も使ってる金属も俺達に寄越せェ!」


 俺は愛用のトラックタのギアをフル回転させる。コイツはイノシシやクマが出た時用の調整をしているからパワーには自信があるッッ!


 斧を持つトラックタがこちらに斧を振り下ろして来るが、その斧の腹の部分を殴り弾き飛ばす。


 そして斧持ちトラックタを持ち上げて2台目3台目と固まっている所に投げつけた!


「どっせい!!金鳳山おろしじゃい!!!」


 落とした斧を拾い、それぞれを行動不能にしていく。


「がっ……ひぃ!てめぇなんて偉そうに出来るのも今のうちだ!ギムノさんが来てくれたら!」


「そうだギムノの兄貴!あの農民をヤッちゃってくだせぇ!」


 ギムノ?そういや街道に出た最近売り出し中の闇アルバイターのリーダーがそんな名前だったか?厄介だな。


「てめぇー!ちょーしのってんじゃねーし!ひとりじめするのは悪い事なんでちゅよー!恵まれない俺達の為に金目のモン寄越せやぁ!!!」


 鋭い蹴りが俺のトラックタに突き刺さる。マジか、イノシシの突進も受け止められるコイツをよろめかせるとは……なかなかやるな。


「俺っちは正義のバイトリーダーギムノ!お前ら悪の記録検閲は許せねぇんだ!人の温かみって奴は無いのか!!」


「ぎ、ギムノさん、既得権益です、記録検閲は隠し事したい奴がやる奴ですよ」


 脚部ローラーの変わりに板バネが付いている違法改造されたトラックタが随分身勝手な事を言いながら俺のトラックタを立て続けに蹴っては離れて蹴っては離れする。クソッ、捕まらないように立ち回ってやがる。


 かなりボロボロにされてトラックタが膝をつくと、目の前の板バネトラックタから耳障りなダミ声が垂れ流される。



「ヒャッハー!俺様のグレートなキックでノックダウンだぜ!」


 バネの反発を利用して加速を始める。その勢いのままギムノトラックタが突っ込んで来る!


「お前のトラックタも俺の女へのプレゼントの足しにしてやるぜ!!!」


 飛び込んで来たタイミングを見計らい、右の拳を叩きつける!!ウエイトはこっちが上でフレームの硬さもこっちが上だ!


 バギィ!!とギムノトラックタの右足が膝の下から弾け飛ぶ!………俺の右拳も砕けたかッッ!


「チッ!見切るとかズルじゃね?卑怯じゃね?卑怯者の相手はしないことにしま〜す!じゃ〜ね〜」


 残った左脚と両手を使い器用に走り去って行くギムノ、………はぁ、トラックタ壊したからまたおやっさんにどやされる……

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