地方創成〜田舎民だけど村長に据えられたので過ごしやすくしたいぜ……〜

コトプロス

第1話 一面のクソミドリ

1話 一面のクソミドリ



「おーい!ガギュウ!そっちの仕事もう終わったのか?」


 ヒゲモジャで真っ黒に日焼けしたおっちゃんがトラックタの運転席からダミ声を響かせる。


「エケベリのおっちゃん!!こないだ荒らされた所はキレイにしといたよ!!まったく、領主サマがちゃんと見回って差配してくれれば良いんだけどさ」


 俺は片付けを終えてトラックタをエケベリのおっちゃんに寄せる。はぁ、まったく俺もヒマじゃないんだが……荒れたままにも出来ないからな。


「マミラのおばちゃんがまた差し入れ持って行くって言ってたからそう愚痴るな愚痴るな。あの家の草刈りまでしてやってるんだって?」


 まあだってあの家おばちゃん1人だけだしな。誰かがやってあげないとさ。


「ガギュウ!お前居るか?!何やら領主サマの所の人間がお前を探しているらしい、いったい何をやらかしたんだ?」


 目の前にカブーターが土煙を上げながら飛び込んで来る。コロラッタか?いったいなんだってんだ?


「なんでも領主アストフィツムのお坊ちゃんが昨日最新のモービルカをお父上である領主サマに買って貰ったらしくてな?調子に乗ったお坊ちゃんが昨夜両親を乗せてテラリムの都会まで走らせてたら途中で事故ったらしい!きっとまた道を整備してなかった俺達にとばっちりとしてお叱りが来るんだぜ?やってられっかよいい加減!!」


 友人のコロラッタが怒りを顕わにする。事故の心配より先にとばっちりの心配をするのは領民として忠誠心に欠ける行いではあるだろうが、領主のアストフィツム家はそう思われても仕方無いぐらい領民の事を考えてくれないからな。


「ハラは立つがここで怒ってもしょうがない。ちょっと行って来るよ。」


 俺は自分のトラックタに乗り込みエンジンをかける。クラッチを離して丸太の様な足を前に出しズン、ズンと少し歩き加速をつけて足首に内蔵されたローラーを起動するとグイーン、と加速して小高い丘の上の領主の館に向かう。


「ちわー、ごめんくださーい。なんか俺をお呼びですかー!」


 門から敷地に入り、玄関前で声を張り上げる。すると奥から使用人をしていた年嵩のある男が現れる。


「アエオニウのおっちゃん!俺を呼べってったんだろ?坊っちゃんが事故ったんだって?場所は?怪我の程度は?」


 アエオニウのおっちゃんは始めは肩を震わせていたが、だんだんくつくつと押し殺したように笑いだし、ついにはガハハハと涙を浮かべて笑い始めた。


「くたばったよ!ランポー様もヘキラン様もギロゴナムのボンクラがモービルカに乗せてぺしゃんこにしちまった!!でだ!ガギュウ、お前のお婆さんが元はアストフィツムの家の娘でなそのよしみで領主やらないか?お飾りで良いんだ。アストフィツムの遠縁だと言って書簡は既にテラリムに送ってるからな。認められれば今日からお前はただのガギュウじゃなくて家名を持つ「ガギュウ・ガステリア」だ!分かったか?」


「いきなり何を言ってんだよおっちゃん!そりゃあ遠い親戚には当たるとは聞いたが偉い人なりの振る舞いなんぞ知らねぇぞ?」


 途端に村内放送用の拡声器が緊急事態を告げるサイレンを高らかに鳴らす。


「ガギュウ!早速おいでなすったぞ?」


「山賊か?」


「あぁ、今首都テラリムはモノの値段がめちゃくちゃ釣り上がって居て普通に働いても税金を払うので精一杯。それで賊をして食い扶持稼ぐ不貞の輩が増えているらしい。」


 ここは街……というか村の規模だから小高い丘の上である領主邸からは入って来ている賊の3人が見えていた。トラックタが3台に積み込み用のニー・モービルカが1台か。野郎畑を荒らしてやがる!


 俺はトラックタに飛び乗り、通信機を叩く。


「コロラッタァ!逃さねぇ様に奴らの背後に回り込めぇ!!上手く行ったら1台はお前のトラックタにして良いからよ!!」


 通信機からは弾き返す様に返事があがる


「ヒュー!!マジかよ!最高だが領主サマは何も言わねぇのかい」


「ボンクラのおかげでぺしゃんこだとよ!」



 俺はダッシュの勢いのまま山賊にトラックタ用の土木工具剣スコップを叩きつける!


 激しい金属音と共に1台のトラックタがひっくり返る。だが3対1だから油断は出来ない。足を止めずに走り抜けて距離を取る。


「ハハハッ!!ここの貧乏領地の領主サマがくたばったらしいから火事場泥棒に来たんだがテメェは自警団か?警備隊も居ないのに1人でなにが出来んだよ!!」


 2台目のトゲを溶接したトラックタが斧を振り回す。違うな、アレは斧の遠心力に振り回されているぜ。


「そらよっ!」


 俺は近くにあった洗濯物を吊るしていたロープを投げる。一瞬引っかかって2台目のトラックタがバランスを崩すがロープも細すぎて千切れる。


「一瞬あれば十分だ!てやあっ!」


 姿勢を低くして足首のタイヤをフル回転させる。すくい上げる様なタックルから持ち上げるて思い切り地面に叩き落とす。


「ヒッ……ヒイッ!わ、わたしこんな事の手伝いだとは知らなくて……い、いのちだけはたすけてください!」


 3台目のトラックタが動きが悪いなと思っていたら、そこには運転席から出て来て両手を挙げて震えている緑髪の女の子がいた。

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