最終話 新たな未来へ
カニ味噌は、仲間の議員たちと飲みに行くことになった。彼は猫であるため、酒は飲めないが石橋が石橋だった頃はそれなりに酒好きだったため飲めないといっても、ウイスキーを麦茶と偽って飲まされてしまった。カニ味噌は、重いアルコールに耐えられず、急性アルコール中毒に陥り、病院へ運ばれることになった。
一方、石橋茂は、カニ味噌としての生活を通じて、ちゃんとした猫になろうと努力していた。十郎が振る猫じゃらしに飛びつこうとしたが、運動音痴の老人、体が思うように動かず、テーブルから飛び降りた瞬間、頭を打って白目をむいて痙攣してしまった。
気が付くと、カニ味噌は再びカニ味噌に、石橋は石橋に戻っていた。彼らはそれぞれの世界に帰り、カニ味噌は動物たちのために戦う存在として、石橋は政治の世界から退き、陰から支える立場に落ち着く決意をした。
石橋は、高井議員に次なる道を託すことにした。彼女は63歳で、長年の経験を持つ信頼できる仲間だった。「私が支えるから、君は国民のために思い切って進んでほしい」と彼は高井に伝えた。高井は、石橋の真剣な思いを受け止め、彼の信頼に応えるべく全力を尽くすことを誓った。
また石橋は少し前までひょんなことから自分が猫になっていた事を高井だけに話した。石橋の真剣な告白はたしかに高井の下に届いた。
その後、石橋の話は高井から十郎に電話で伝えられることになった。高井は、十郎に「実は、石橋がカニ味噌だった時のことを話した。彼の思いは私たち全員の未来に関わることである」と真剣に語った。
十郎は、突然の総理大臣となった高井からの電話に驚いた。「え?高井さんから?悪戯電話なの?」と疑いながらも、彼女の言葉に耳を傾けた。高井の話の中で、石橋がカニ味噌としての経験を通じて得た教訓や、動物たちのために戦う姿勢が語られると、十郎は次第にその真剣さを理解し始めた。
「それに、石橋さんが赤ちゃん言葉で猫じゃらしを振るあなたの姿を見たことがある」と高井が言うと、十郎は驚愕した。「それは…本当に石橋さんだったの?」と信じられない思いでいっぱいになった。彼は、二人(1人と1匹)の秘密を言い当てられ、石橋の真剣な思いを信じることができた。と同時に耳まで赤くなった。
そして足元に戯れ付く愛猫カニ味噌に
「おかえりカニ味噌、お疲れ様でした、総理」と十郎が言った。その言葉に、カニ味噌は少し照れくさそうに「うにゃっ」と返事をした。
彼は、自分が動物たちのために戦う存在であることを再確認し、これからの未来に向けて新たな一歩を踏み出す決意を固めた。
石橋は、カニ味噌の存在を通じて得た教訓を胸に、これからは陰から支える立場で、動物たちや人々のために尽力することを誓った。彼の心には、みんなを守るために戦うという強い意志が宿っていた。
こうして、カニ味噌と石橋はそれぞれの役割を果たしながら、前に向かって力強く歩み始めた。彼らの戦いは、まだ終わらない。きっと明るい未来が待っていることを信じて、彼らは共に進んでいくのだった。
総理と呼ばにゃいで 菖蒲十郎 @ayamejuro62
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