3. 幼馴染が不条理に叱ってくる?逃げるしかないでしょ!
「あ、こら、逃げるな!」
幼馴染に見つかった
まだ街の中の地理に全く詳しくないにも関わらず、目についた細い路地へと飛び込み全力で疾走する。
「待ちなさーい!」
「いやああああ!助けてええええ!」
「こらああああ!それじゃあこっちが悪者じゃない!」
勝手に他人の個人情報を暴露しようとしていた
「くっ、ちょこまかと!」
「どうして撒けないの!?」
実はこれまで何度もリアルで追いかけられたことがあり、
「うお、何だ!?」
「すいません!」
ふと横から出て来たNPCが
「下の人危ない!」
上から植木鉢が落ちて来て、下にいる女の子に当たりそうになるところ、まもりは慌てて女の子を抱き抱えて避難させる。
「ありが……」
「お礼は不要よ!」
そしてそのまま
「このくらい想定済みよ!ゲーム内ならなんとでもなるわ!」
まもりが
「絶対に逃がさない!」
「うそぉ!壁走ってる!?」
しかもスキルまで充実しているとなれば、
「きゃ!」
「捕まえた!」
そして大通りに飛び出た所で、ついに
まもりの頭上に怪しげなランプが出現したが、ギリギリまだアウト判定はなされていない。ここでアウト判定されてしまったならば、先ほどの一撃と合わせてBANされてしまう可能性もありえる。
「いやああああ、助けてええええ!」
「だからそういう勘違いさせるようなこと言わないの!」
「勘違いじゃないもん!まもり絶対怒ってるもん!」
「当たり前でしょ!」
「びゃあ゛ぁ゛゛ぁ!」
必死になって暴れて抵抗する
「暴れないの!どっちにしろ
「え!?」
「さっき自分で暴露してたじゃない」
「びゃあ゛ぁ゛゛ぁ!聞いてたの!?」
「当たり前じゃない!絶対にFMOをやると思って初心者配信を張ってたんだから!」
大学を知られてしまっては逃げる意味など無い。
「うう、ストーカーに捕まっちゃった……」
「人聞きの悪いこと言わないで。誰のせいだと思ってるのよ」
「まもり?」
「あーなーたーのーせーいーでーしょー!」
「いだいいだい!やめれー!」
FMOは魔物に攻撃されて傷ついても痛みを感じない設定になっているのに何故頬を抓られて痛むのかと不思議に思う
「まったく変わってないんだから」
「まもりは変わっちゃったね」
「これはアバターだから違うのが普通なの!というか本名で呼ばないでよ!」
「え~別に良いじゃん」
「呼・ば・な・い・で!」
「いだいいだい!分かった!分かったから頬は抓らないで!」
両頬をお餅のように伸ばされながら抗議する
「それにしても予想はしてたけれど本当に本名とリアルの見た目で始めちゃうなんて」
「だってそっちの方が楽なんだもん。まもりは…………ああ、そういうことかぁ」
「な、なによその眼は」
「べっつにぃ~」
「リアルがまな板だからってゲーム内で夢を叶えるなんて虚しくないの?」
「うるさああああい!べ、べべ、別にそういうのじゃないし!」
乳牛と呼べるほどにたゆんたゆんする胸を両腕で抱えて照れるまもりの様子からは、
『まもりちゃんはまな板。( ..)φメモメモ』
「え!?まだ配信続けてるの!?ダメ!切りなさい!」
基本的に配信で聞こえる音声は設定した人にしか聞こえないが、初心者配信の場合は別で話しかけて来た相手にも聞こえるような特殊設定になっている。ゆえにまもりにも配信のコメント音声が聞こえていた。
「え~別に良いじゃん。まもりがまな板なのは事実な訳だし」
「まな板じゃないから!ほんのちょっとだけ膨らんでるから!」
パニックになり深堀しなくても良い話を勝手に掘り進めて自爆するまもりであった。
「ああもう、配信AI。配信を止めなさい!」
『はーい。お疲れ様でーす!』
「あ、行っちゃった……もう、もっとお話ししたかったのに」
配信カメラは配信を拒否られたら最優先で配信を止めるようにプログラムされている。ゆえにまもりの指示によりカメラは配信を止めつつ彼女達の傍から離れて行ってしまった。
「このゲームも配信もやってはダメってあれほど言ったのに!」
「だって皆楽しそうにやってるんだもん。良いじゃん私がやったってさ」
「お願いだからネットリテラシーを学んでからにして……」
「まもりは気にしすぎなんだって。気にしなくてもへーきへーき」
「平気じゃないの!その証拠に私の恥ずかしい話が知られちゃったじゃない!」
「
「…………コロスヨ?」
「あっ……ごめんなさい」
まもりが本気で怒った時は表情が消えて殺意が駄々洩れになる。
これ以上は触れてはならないと判断した
「はぁ、こうならないために抑えてたのに、私に嘘ついて言ってたのとは違う大学を受験してたなんて」
「大学ではまもりに邪魔されず自由に生活したかったからね」
「まぁ予想通りだったけど、少しズレてたわ」
「え?」
「
「ナニソレ怖い」
どうやら
だがまもりにとって、それ以外の選択肢は無かったのだ。
「あんたを放置しておくと私の個人情報を垂れ流しにするから傍で管理するしかないのよ!」
ネットリテラシーが低い
「だ~か~ら~、気にしすぎなんだって」
「あんたがそんなんだから私は別の大学に行けなかったのよ!」
しかも肝心の
「別に行って良かったのに」
「はぁ……もう良いわ。あんたの学部も分かりそうだし、これからはいつも通り監視するから」
「え~」
「文句があるなら個人情報を守ってから言いなさい」
「だからそれは……あ、じゃあもうこれからはL〇NE送って来ない?大量にメッセージが来てうざかったの」
「だって卒業してからあんたが未読スルーしまくるからいけないのよ。逃げないなら送らないわ」
「良かったぁ。一日に百通くらい送られてきてちょっとしたホラーだったもん」
「そ、そんなに送ったかな……」
いきなり幼馴染が無視してきたので心配になって大量送信したというのは分からなくは無いが、一日に百通もメッセージを送るのは普通ではない。嫌がらせのつもりなのか過保護なのか個人情報が心配だったのかそれとも……
「ああ、そうそう。フレンド登録するわよ」
「え?」
「なんで驚いてるのよ。当然でしょ」
「いやぁ……ゲームくらい別行動で良くない?」
「さっき堂々と私の個人情報をばら撒いといて何言ってるのよ!」
「ちぇっ」
フレンド登録すると、相手が何処にいるのかが分かるようになる。
仕方なしとばかりにフレンド登録を終えると、まもりは何処となく嬉しそうにしている。その様子を見て
「良かった」
「何が?」
「だってあまり怒ってないみたいだし」
「…………怒ってるわよ」
「大学を嘘ついちゃったのは私もちょっとやりすぎだったかなって思ってるの。ごめんね」
色々とうざい幼馴染ではあるが、高校まで仲良くしていたのに嘘をついて強引に別れようとしたことは、
「別にそれは怒ってないわよ」
「え?」
「さっきも言ってた通り、予想通りだったし、これまでも何度も逃げようとしたでしょ」
実は
そういう理由もあり、またいつものことかと嘘を吐かれたことは特に気にしていなかった。
「じゃあやっぱり怒ってないの?」
先ほど怒っていたのは、勝手に個人情報を晒してしまったこと。
あるいはこのゲームや配信をやるなと言っていたのに始めてしまったことに対してだろう。
だとするとまもりはそれ以外で特に怒ってはいないのだろうか。
いや、『
「怒ってるわよ。と~っても怒ってるわ」
「あ、ヤバい」
まもりの目のハイライトが消えた。
ゲームのアバターなのにどうしてそこまでリアルな反応が可能なのか気にはなったが、逃げなければと本能が警鐘を鳴らしているためそれどころではない。
「な、何を怒ってるの?」
「…………あんた、両親に何を吹き込んだのかしら」
「え?」
子煩悩でダダ甘な父親と、優しいけれど時々笑顔のまま異様に怖くなる母親。
まもりは良く
だがそれが
何故なら
ゆえに大学の進学先について嘘を吐いたとしても、まもりは
「あっ……」
彼女は今更ながらそのことを思い出し、どうしてまもりが怒っているのかを理解した。
「どうやらその様子だと、忘れているってわけじゃあ無さそうね」
「びゃあ゛ぁ゛゛ぁ怖いいいい!」
まもりが本気の怒りのオーラをその身に纏い、
だが自業自得なので仕方ない。
「私は
「…………最近、まもりが私を見る目が怖いって」
女同士だけれど身の危険を感じる。
その言葉を
それゆえまもりが
『
そう悲しそうに告げる
「ふん!」
「いだぁ!」
当時の怒りを思い出し、思わずまもりは頭突きをしてしまった。
ブー!ブー!ブー!
プレイヤー間での攻撃行為は禁止されています!
それが攻撃判定とされてしまい、まもりの周囲に大量の衛兵がやってきた。
「ちょっ!今のは違うの!悪いのはあっち!私は悪くない!」
「その人がいきなり頭突きして来たんです。助けてください」
「
「ふぅ。悪は滅びた」
ゲームにログインしていきなりの危機だったが
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あとがき
幼馴染を蔑ろにするのはダメ、ゼッタイ! by 幼馴染スキー
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