1.Fake smile
第2話
自分の言動に何度後悔しただろう。でも大抵それは、後から人に言われて気付く。
私は昔から、人一倍我が強く、負けず嫌いな性格だった。自己中心的で、傲慢で欲深い。短気でカッとなるとすぐ喧嘩になって、学校でも孤立した。
そんな気難しい性格の私に、母は昔から手を焼いていたらしい。大学生になった時、とある喧嘩をきっかけに、大学が家から遠いわけでもないのに一人暮らしをしろと言ってまとまったお金をぽんと渡された。
私にはわからなかった。自分の性格が悪いことはわかってたけど、どういうところがだめなのか、自分から気付くことができなかった。
いつも誰かに言われて初めて、ああそうなんだって理解する。だけど、別に良かった。どうせ私はこういう性格なんだから、自由にすればいいと思っていた。
孤立しても、本当に仲が良くて私をわかってくれる友達はいる。ならそれで構わない……と、思っていたけど、
大学3年生の時、"彼"に出会うことでその考えは変わった。
柊木
一目惚れだった。タイプだった。こんなに綺麗な人がいるんだと衝撃を受けた私は、彼に恋をした。
私は割と美人な方だと思う。この性格のせいで付き合っても長くは続かないけど、最初に振られたことはなかった。
だけど、その男、柊木惇弥には幼なじみの彼女がいた。
彼の気持ちを手に入れるのは難しかった。彼と彼女の間には、私が入り込む隙間もないくらい強固な絆のようなものがあった。
私は、まるでおとぎ話の悪女のように、その彼女を彼から遠ざけ、二人の関係を邪魔して、彼を手に入れようとした。
私の計画は、上手くいっていた。彼にはバレずに彼女を貶めて…それなのに。
「お前みたいなわがままで性格悪い女、無理だから」
彼女がいなくても、私は選ばれなかった。
彼女を遠ざけ、「付き合ってほしい」と自信満々で告白した私に、彼が言った一言がそれだった。
そこでまた、ああ私ダメだったんだって気づいた。いつもなら、そう言われたら諦めるけど、その時は違った。
私は、何がダメだったのかを徹底的に考えた。
愛されたい。あの人を、手に入れたい。
あの綺麗な顔で笑いかけて欲しい。好きだと言って欲しい。二人でいろんなところに行きたい。
気づいたら、彼しか考えられなくなっていた私は、彼が私以外の人とこの先付き合っていくのが耐えられなくなっていた。
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