第6話
「……あなたがこの結婚に消極的なら、この話は一旦保留にしましょう」
そう言って、扉に手をかける。そのまま去ろうとする私を、「待て」と彼が引き止める。
「それなら、御堂は…」
「私は神崎家の次期当主となってくれる方を探しているんです。あなたが無理なら、お父様に言って破談にしてもらいます」
背を向けたまま硬い声でそう言う私に、後ろで彼が息を呑む音が聞こえる。近寄ってくる気配がして、私が振り向くのと腕を強く掴まれるのが同時だった。
「…っ、いたい、です…」
「……ごめん」
彼は動揺した様子で手を離すと、俯いた。
「時間を、くれないか」
「……」
「もう少しだけ、時間を…」
何かに葛藤するようにそう言う彼に、もっと不快な気持ちになる。
そんなに私と結婚するのは嫌なのか。私だって、別にあなたじゃないとダメな理由は無いわけで。
彼の手をパチンと振り払って、ふいと横をむく。
「そんなにイヤイヤ結婚されても、こちらはただ心苦しいだけです」
「……」
「結婚するか、しないか、決めたら連絡くださいね」
それだけ言って、今度こそその部屋を出る。外で談笑していた両親の元へ行って、「帰りましょう」とコートを着ながら言う。
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