第6話

ガールズバー『mirror』



私はここでアイナという源氏名で働いている。




「お待たせしました〜っ、…って、りょうさんじゃん」



にこやかにカウンターに行くが、見慣れた人物の姿に一転して表情を崩す。


そんな私の態度に、稜さんは呆れた顔をした。



「おいおい。客への態度じゃないだろ」


「だって、稜さんだもん。あ、もう先に飲んでたの?」



半分くらいに減ったグラスを見て、頬を膨らませる。稜さんは苦笑すると、「好きなの頼め」と言ってグラスを空にした。



「わーい。ありがとう〜!」



稜さんは、2年前ここで働き出してからずっと私を指名してくれる常連客だ。


28歳で、仕事は医療関係だとか。気前が良くて、ワイルドでかっこいい。



規模の小さなこのお店で私を贔屓にしてくれる、言わずもがなの上客だ。




「――そういえば、西地区を牛耳ってる奴が戻ってきたらしいな」


「え、西地区?」



稜さんと話をしてしばらく、彼が思い出したかのように言ったその言葉に反応する。

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