「…あ、これ!白井君の色だ!あぁ、うんそうだね、すごい納得」

 何かを見つけたのか、1本の色鉛筆を俺に見せて来た。

「俺の色…?」

「そう、私に見えている白井君のオーラの色。私、人から出ているオーラの色が見えるの。この色鉛筆の名前見てみて?」

 オーラが見える人と言うのは聞いたことあったが、こんな身近にいたとは…親父が言ってた凄い色彩感覚と言うのは、オーラが見えるという話だったのか。

「えっと…『天気のいい日に干したぬいぐるみのにおいの色』?これ色じゃなくてにおいの説明じゃない?」

「そこも含めて楽しまないと!この色みて白井君だ!と思ったら、こんなにぴったりな名前でびっくりだよっ。すみません、これください」

 彼女は、俺のオーラの色とやらの色鉛筆の他に、10本ほどをもって店主の下へ買いに行った。ついでに店主の連絡先まで持って帰ってくるという驚きのコミュニケーション能力だ。

「お待たせっ。付き合ってくれてありがとう!それから…はいこれっ」

 外に出ると、色鉛筆を1本渡された。書いてある名前は、『天気のいい日に干したぬいぐるみのにおいの色』

「貰って良いの?」

「うん!白井君はオレンジっぽいオーラをしてるから、暖色系に強い文房具屋さんを探してたの。見つかるかなぁってちょっとだけ期待してたんだけ、大当たりだった!」

 黒と白のちょうど中間の濃淡をした色鉛筆は、オレンジ色らしい。俺は、この面白い名前をした色鉛筆を一生ペンケースの中に入れることになる。

「おかえりなさいませ。いいものは見つかりましたか?」

「はい!満足です」

 宇瑠間さんが近くまで迎えに来てくれて、再び快適な旅が始まった。

「白井君、いつもよりたくさん話すカノン様の姿にびっくりしたんじゃないですか?」

「まぁ、そうですね。色鉛筆の種類の多さにも驚きましたけど、1番は藍染さんのマシンガントークが凄く面白かったです」

「あははっ、そうですよね。色鉛筆の収集は、カノン様の趣味なんです。仕事が落ち着いたタイミングをみて、こんな風に沢山の種類を持ち合わせている文房具屋さんに出向いているのです。今までは私が同行していたのですが、これからは白井君についてもらうことになると思います」

「趣味なんだ…。でも、良いんですか?俺ただ藍染さん見て一緒に楽しんでるだけなんですけど…」

「いいのいいのっ。1人じゃ寂しいし、楽しんでもらえる人が居るのは嬉しいから!…でも、私の持ってる収納庫見られたら流石に引かれる…」

 なんと、藍染さんの部屋とは別で、色鉛筆専用の部屋があるらしい。そこには今日行った文房具屋さんとは比にならないほどの量の色鉛筆がおさめられているという。

「今度見せてね」

「…ひかないと約束できるのであれば」

 こうして、初めての彼女の不思議な趣味のお供は終了した。

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