スタジオでの撮影から1週間が経ち、藍染さんの仕事もひと段落着いたところだった。1つ目の書類を片付け終わったところを藍染さんに声を掛けられた。
「ねぇ白井君」
「ん?」
「突然なんだけど、一緒に出掛けてくれない?」
「全然いいけど…どこに?」
「文房具屋さん」
…文房具屋?それなら大学の中でも買えるのに。と思っていたが、全く違った。宇瑠間さんの車で行くという事なのだが…
「2時間⁉そんなに遠くまで行くの⁉文房具屋さんに行くのに⁉」
常人の俺には理解のできないほどのこだわりがあるのか…?だが、これはもはや仕事ではない気がするのだけども。
「初日に言ってたでしょ?主な仕事は、書類整理とか、私の遠出に付き合ってもらうって」
「あぁ、そういえば…。それが、文房具屋さんに行くこと?」
「そう!私の憩いの場に行くの。面白いから、アルバイトの人が来るって分かった時に絶対に一緒に行こうって決めてたの」
目に光を宿しながら楽しそうにそう語る藍染さん。文房具屋さんでそこまで面白いことがあるのだろうかとかなり不思議に思ったのだが、彼女がそこまで言うなら。と楽しみにすることに。途中で何度か休憩をはさみながらの移動は、こんなので時給をもらってもいいのかと疑う程に快適だった。
「着きました、お疲れ様です」
「ありがとうございます」
降りた場所は、とても栄えているとは言えない普通の住宅街だった。宇瑠間さんは車で待機しているという事だったので、2人で道に降りた。道にはちらほらと住民らしき人が歩いている。…藍染さんは本当にここへ来たかったのだろうか?
「えっとね…ここだ!えぇ凄い民家だね…行こっか」
「えっ、普通の家じゃないよね⁉」
彼女の携帯だけを頼りにここへ来たが、あまりにもお店と言うオーラのない民家だ。本当に入っていいのかと躊躇している俺とは対照的に、藍染さんは迷うことなくチャイムを鳴らした。
「大丈夫。ここからは商売の色が流れてるから、きっと開いてるよ」
「商売の色?え…?」
本当に色々理解が追い付いていない。頭の中にはてなマークが10個ほど浮かんだところで、家の中から初老の男性が出て来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます