土曜日の朝8時。俺は会社の前に立っていた。今日は前々から言われていたブランドの撮影という事で、ここではなく別のスタジオまで移動するのだそうだ。という訳で、今は藍染さんを待っている。

「おはよう白井君!ごめんねお待たせっ」

「おはよ…え⁉呼んでくれたら取りに行ったよ⁉」

 両手に大荷物を抱えて門まで来た彼女の手から大半のものを受け取ったが、これかなりの重量だよ?よくここまで持ってきたね?

「あっありがとう!」

 しばらくして宇瑠間さんの車が到着して、俺たちはスタジオへと向かった。

「この前説明した通り、今日はスタジオでブランドの撮影です。スタッフの人結構いるけど、皆いい人たちだから心配しなくて大丈夫だよ」

「分かった」

 緊張しなくても大丈夫だよ。とは言われたけど…

「…これは緊張するよ?」

 スタジオにつくや否や、

「白井君、私今から挨拶して回ってくるからそこのテーブルで作業始めててくれる?」

 と言って、宇瑠間さんを連れて行ってしまった。まさか宇瑠間さんまで一緒に行くとは思わず、初めての場所で少々焦っている…。作業自体は事前に言われていたからどうってことないけれど、これは人見知りじゃない俺でも人見知りするんですけど。

「…見かけない顔ね?」

「んなぁっ…。お、おはようございます初めまして、」

 持ってきた資料などをテーブルに並べていると、突然後ろから綺麗なマダムに声を掛けられた。

「ふふっ、ごめんなさい驚かせて。もしかしてカノン様のところのアルバイトの方かしら?」

「あ、そうです。白井と申します…」

「白井君ね。私はカノン様の撮影でカメラを担当している胡桃沢と言います。まぁでも、年の近い方が入られたとは聞いていたけど、若いわねっ。肌の張りが違うわっ」

「そ、うですか?藍染さんとは大学が同じで…」

「あらそうなの⁉カノン様、同じくらいの年齢の人が来てくれるんですって凄い喜んでらしたのよ。しかもこんなに好青年でカッコいい子なんて、まぁカノン様が羨ましいわっ」

 なぜかべた褒めされて、妙に居心地が悪くなった頃、さっきまで2人くっ着いて挨拶してまわっていた藍染さんと宇瑠間さんが戻ってきた。一安心…

「おはようございます胡桃沢さん!今回もよろしくお願いします」

「おはようございます!こちらこそよろしくお願いしますねっ。それにしてもカノン様、こんなにもイケメンで柔らかい雰囲気の方が入ってこられたなんて、羨ましいですわ!宇瑠間も凄いカッコいいけど、ちょっとお堅いところがありますからね?」

「…胡桃沢さん、それ私本人の居る所で言わないでくださいよ、」

 苦笑いをした宇瑠間さんに軽く謝りながら、胡桃沢さんは持ち場へと戻っていった。

「荷物ありがとうね。あと15分位したら撮影始めるから、頑張ってね!」

「私も近くで作業いたしますので、分からない事があればお聞きください」

 仕事自体難しい事は少ないが、ただただ忙しかった。作業の合間に藍染さんの方を盗み見してたんだけど…

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