そして、その株式会社MUGENの社長は今俺たちの目の前でうどんをすすっている。何とも信じがたい光景…
「カノンちゃんも食堂で食べてたんだね、勝手にお弁当とか持ってきてそうなイメージつけてたからさ」
「そう?せっかくの大学生活だから、色んな事楽しみたいなぁって思って絶対食堂かカフェで食べてるよっ」
「分かる!今を思う存分楽しまないとねー?」
今までは授業前に少し会話をするくらいの関係だった藍染さんと沢山話せる環境になったことが嬉しいのか、女子2人は質問攻めになっている。楽しそうで何よりだ。
「カノンちゃんって彼氏いるの?」
「いないよ?いたこともないなぁ」
その言葉にその場にいた全員が驚きの声を上げた。
「へっ、そんなに意外だった…?」
「うんめちゃくちゃ。大学入ってからも告白されたでしょ?」
「ん~…して貰ったことはあるけど。多分私に恋愛は向いてないんだよね。今はこの生活が楽しいしっ。」
藍染さんが恋愛に向いているかどうかは今の俺に判断はまだできないけれど、会社の経営に大学、それに加えて恋愛ともなるとさすがに時間が足らないだろう。
「…カノンちゃんってすべてが大人だよね。考え方が今の大学生じゃない」
「だよなぁ…なんか彼女欲しいとか口癖のように言ってるのが恥ずかしくなるよ、」
「えぇなんで!」
人当たりのいい藍染さんはあっという間に俺ら4人と仲良くなった。そして、そんな彼女と一緒に働くことが結構楽しくて夢中になっていると、気付ば半月ほどが経っていた。
「お疲れ様白井君。今日はちょっとハードだったでしょ?」
「…ちょっとね。でも面白かったよ?」
ハードだったでしょ?と聞いてくれてはいるが、確実に彼女の方が忙しそうにしていた。何回もスタッフの人に呼ばれて出て行ったり、確認を取りに来る人が次から次へと現れ。ほとんど部屋に居らず走り回っていた。
「忙しい理由は何だったの?」
「今週末にね、ブランドの撮影が入っているの。それで最終確認とか調整が多くて。あ、白井君今週の土曜日シフトはいってたよね?その日が撮影だから、頑張ってね!」
「…状況はよくわからないけど頑張ります」
撮影の現場を見る機会なんか滅多にないことで、話を聞いてからずっとワクワクしている。遠足前に寝られなくなる小学生の気持ちなのかもしれない。
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