「ダイ帰んないの?」

「帰るけど、このままバイト行くわ。…藍染さん、」

 少し離れた所にいた藍染さんに手を振って終わったよと合図を送る。講義が終わっても中々動かない俺を不思議に思ったハルトが声を掛けてきたが…

「…え、なにダイどういうこと⁉カノンちゃんとどういう関係なの⁉」

「おい抜け駆けしたな、」

 隣にナホとユウカが居たというのに藍染さんに声を掛けてしまったがため、すごい剣幕で攻め立てられている。そういや2人は彼女の熱狂的ファンのようなものだった…。これでもかという程肩を揺さぶられている。

「違う違う落ち着け痛ぇ…!新しいバイト先がたまたま一緒だったんだよ、」

「そうなの、だからシフト同じ日は一緒に行こうって話になったの」

 藍染さんに助け舟を出してもらって、ようやく納得した2人。…これ、藍染さんの彼氏にでも出会ってしまったらこの2人は大変なことになるんじゃないか、と変な心配をしてしまう。

「めっちゃ偶然じゃん!てことはダイもアパレル?お前も服好きだもんな」

「まぁね。ってことでまた明日…」

「ストップ!」

 これ以上女子2人に詮索される前に退散しようとしたが、俺じゃなくて藍染さんのほうがナホに止められた。

「な、なんかあった?」

「うん。カノンちゃん明日から講義被る日一緒にお昼食べよ?」

 離すまいと両手を握って懇願している姿はまるでプロポーズだ。後ろでハルトはその必死な姿に大爆笑している。

「ダメ?」

「だ、ダメじゃないよ!むしろ、私がみんなの輪に入っていいのかなって…」

「いいじゃんいいじゃん!明日から5人飯だなっ」

 お昼を一緒に食べることになって大喜びの女子2人を置いて、俺たちは大学を出た。

「なんか、最近みんなと仲良くなれてすっごい嬉しいんだよね」

「あの2人、ずっと藍染さんと仲良くなりたいって言ってたんだよ。あの喜び方を見てわかる通りに…てかさ、これ駅と反対方向だけどいいの?」

 何も考えずに藍染さんについてきていたけど、駅からどんどん離れている。

「大丈夫!ここに来たかったの。お待たせしました」

「…んぇ、宇瑠間さん⁉」

 人気の少ないコンビニの駐車場に止まる1台の黒い車からしっかりスーツを着こなした宇瑠間さんが出てきた。

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