第8話メール
映画を一緒に檸檬と観ると俺はバイクで自宅に帰った。檸檬は、何故かテンションが高く俺の連絡先を聞いて来た。まぁ、同好会仲間だから良いかと思って教えた。夕飯を食べ終わると俺はリビングのソファーで居眠りを始めた。スマホが鳴ったが俺は夢の中へ引きずり込まれた。目を覚ますと朝の七時だった。スマホを見ると檸檬からメールが何件か入っていた。今日は、楽しかったありがとう。寝てるの?おやすみなさいと3件来ていた。律子からは連絡は入っていなかった。冬休み特に予定は無かった。親戚も集らなくなった。俺は、ソファーから起きると二階に上がって自分の部屋のベッドで二度寝した。起きると朝の十時過ぎだった。一階のリビングに降りると台所には未知子が立っていた。「おはよう。」「おはよう。」とお互いの顔を見て言った。「何か食べる?パン?ご飯?」と未知子は俺に聞いて来た。「まだ、腹減ってない。」と頭を掻きながら俺は答えた。「今日は、有紗の所に行くから着替えて来てね。」有紗とは姉の事だ。有紗は、短大生で東京で一人暮らしをしている。父親がリビングに入って来た。「おはよう。」「おはよう」と挨拶を俺と父親の一郎は交わした。
一郎の運転する車で東京まで二時間かけて行った。助手席には未知子。後部座席に俺は座って外の景色を見つめていた。有紗のマンションはセキュリティが厳しい学生専用のマンションだった。友達も部屋に気楽には呼べない寮のような所に有紗は住んで慣れない環境に参ってしまって今日、自宅に戻って来る事になったのだ。そして、自宅から短大まで通う事になる。荷物の少ない引っ越しである。マンションに到着すると未知子だけが施設に入れた。男子禁制のマンションだった。俺と一郎は近所の商店街を目的もなく歩いていた。本屋があったので二人で入った。狭い本屋だった。俺は、本を読むのが好きだった。中学三年生の夏休みは受験勉強せずに毎日、図書館に行っては本を読んでいた。一冊の文庫本を買って本屋を後にした。
久しぶりに、会った有紗は意外と元気で未知子と荷物をまとめて車のトランクに入れていた。一郎が、「帰るか。」と言うと有紗も後部座席に座って自宅まで車で帰った。帰りの車の中では有紗と未知子の会話が主だった。自宅に着くと少ない荷物を運んで俺は自室に閉じこもり買って来た文庫本を読み始めた。一階のリビングからは笑い声が聞こえて来た。本に夢中になっているとすぐに夕飯の時間になった。有紗は、終始、笑顔で夕飯を食べている。「洋、野球辞めたんだって?」不意に有紗が聞いて来た。「あぁ。」と俺は答えた。有紗は、それ以上は追求して来なかった。
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