第7話映画館
期末試験が終わると放課後に律子が「映画館に行こう。」と俺と檸檬に言った。檸檬は、あれから意外だが同好会に毎日来ては感想文を書いて楽しそうだった。帰り道では檸檬は一方的に俺に話しかけてくるようになった。俺は、「あぁ。」とか「うん」としか答えてない。それでも笑顔を絶やさない檸檬に俺は感心していた。律子も相変わらず同好会が終わるとサッサッと帰ってしまう。二人の感想文には映画愛が感じれた。帰り道で俺は檸檬に質問した。「映画館行くの楽しみ?」「楽しみ!」と檸檬は即答だった。「ふ〜ん。」俺は何も感じずにふ〜んと言った。「その、ふ〜んってどこからのふ〜んなの?」と檸檬は不思議な事を聞いて来た。「別に。ふ〜んと思っただけ。」と俺は答えた。「そっか!」と檸檬は明るく言った。「何でそんなにいつも明るい感じなの?」「逆に塩見君は何でそんなに暗い、あ、ごめんなさい。」檸檬は、あちゃー本音を言ってしまってバツが悪そうという顔をした。「別に良いよ。」と俺は言った。
次の日は、冬休みに入る土曜日だった。三人で映画館に行く日だった。駅前の古いテラスモールに入っている映画館に行く予定だ。俺は原付バイクでテラスモールまで向かった。夏休み暇だったので免許を取りに行った。たぶん、二人はバスか自転車で来る。テラスモールの駐車場にバイクを停めると俺は映画館に入った。そこには綺麗な女の子がいた。スタイルが良くて薄っすらお化粧をしている様子だった。上の中かな?と勝手に俺は女の子の見た目や仕草に点数を付けていた。「あ!塩見君!」とその女の子は言って俺の側までやって来た。「え?誰?」と思わず女の子に聞いてしまった。「え?」と女の子もキョトンとしている。「檸檬だよ!」あ!檸檬だと俺は分かるまで時間がかかった。「ごめん。」と素直に俺は謝った。「良かった。」と檸檬は安心した様子だった。
映画館のフロントの椅子に二人で座った。律子を待った。しかし、律子はなかなか現れなかった。俺はスマホをズボンのポケットから取り出して律子に電話した。檸檬が、心配そうに俺を見つめている。「ごめん。風邪引いた。」と律子は電話に出て言った。酷い鼻声だった。「大丈夫か?」と俺が聞く前に電話は切れた。「どうしたの?律子ちゃん?」「風邪引いたって。帰ろうか?」と俺は椅子を立った。「何で?二人で観ようよ。ね?」と檸檬が何故か恥ずかしそうに俺に言った。「でも、三人じゃないと同好会じゃないし。」と俺は呟いた。「そっかあ。」と残念そうに檸檬は下を向いた。あまりに檸檬がガッカリしているので「二人で観るか?」と言った。「うん。」と檸檬は嬉しそうに答えた。
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