第4話同好会

俺は、学校で相変わらず一人だった。昼休みは図書室に行くようになった。律子は、弁当を食べ終わるのが遅かった。律子は、あれから何も言って来ない。気まぐれかと俺は思い図書室で古い単行本を読んでいた。最近、寒い季節になって来た。朝起きるのが億劫だ。学校に通う事自体、絶望的な気持ちになるのに寒くなったら冬眠したくなる。学校内にある自動販売機でジュースを買って俺は飲んだ。炭酸は俺を刺激してくれる。「塩見君。」と律子が背後に立っていた。「何?」俺は、ぶっきらぼうに聞いた。「同好会なら良いって。」と律子は答えた。二人だもんな、部活としては認められないよなと思った。「そっか。」「今日から視聴会しない?」ん?なんだそれ?「映画を観るの。」「あぁ。」納得。


放課後になると俺と律子は教室に残った。律子の話では自分達の教室にあるテレビでDVDプレイヤーから映画を観る事が同好会の活動らしい。律子は、ポップコーンとコーラを持参して来た。「食べて良いよ。」と律子は俺に言った。「ありがとう。」「何観る?アニメ?映画?」と律子は俺に聞きながら大量のDVDを机の上に出した。「映画かな。」俺の知らない映画やアニメが多かった。俺は、映画は好きだがオタクではない。律子は、完全にディープなオタクだと思った。俺が悩んでいると律子はあるアニメのDVDをDVDプレイヤーに無言で入れて再生した。知らないアニメだった。まだまだ俺の知らない世界があると痛感した。


アニメを見終わった後、俺は、律子に一枚のわら半紙を渡された。「感想書いて。」と言われた。感想?小学生かよ?俺は、そんな事を思いながらも真面目に感想を書いた。「はい。」と律子はわら半紙を渡して来て俺の感想文を手にとって隣の机で読み始めた。俺は、律子の感想文を呼んだ。字が綺麗だなと思った。律子の感想文は俺のアニメの見方とは角度が違っていた。的確で正確。少し辛口評論。「うん。良いね。」と律子は言って嬉しそうに俺の目を見てきた。「ありがとう。」と俺は何故か照れながら言った。それから映画を一本観て帰宅した。俺は、自宅のソファーで寝転がって久しぶりに充実感に満たされていた。

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