第20話 新たな道
朝日が村を照らし始める頃、カイは「月のキッチン」の前に立っていた。昨夜の満月の光に照らされていた村は、静けさと共に新しい一日を迎えている。
カイの手には小さな荷物が握られていた。それは、この村で過ごした時間を象徴するもののように感じられた。
「行くのね。」
背後からツキの静かな声が聞こえた。振り返ると、彼女は変わらぬ穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
「はい。でも、これが終わりじゃないって思っています。」
カイはツキの目をしっかりと見つめながら言葉を紡いだ。
「ここで過ごした時間や、教えていただいた月のリズム、自然の力。それを都会に戻って活かしたいんです。僕にもできることがきっとあると思うんです。」
ツキはその言葉に小さく頷き、カイの肩に手を置いた。
「それがあなたの使命なのね。あなたが自分で選んだ道なら、きっとそれが正しいわ。」
「ツキさんのおかげです。僕はここで、ただの逃げ場を見つけただけじゃなく、自分の中にある強さと向き合うことができました。」
「それはあなた自身が見つけたものよ。私は少し背中を押しただけ。」
ツキの声には、どこか誇らしげな響きがあった。
「でも、また戻ってきてもいいですか?」
カイの問いかけに、ツキは優しく微笑んだ。
「もちろん。月のリズムがあなたを導く時、この場所はいつでもあなたを迎えるわ。」
最後に「月のキッチン」を振り返ったカイは、心の中で深く感謝の念を抱いた。そして、村を離れる道を歩み始めた。
山間の風が彼の髪をなびかせ、朝日の光が彼の行く先を照らしている。都会に戻るその足取りは、以前の迷いや不安とは違い、しっかりとした決意を感じさせるものだった。
自分の使命を見つけたカイは、この村で学んだすべてを胸に、新しい未来を切り開くための一歩を踏み出した。
満月の光の下で始まった物語は、朝日と共に新たな章へと続いていく。カイがどのような未来を築いていくのか、それはまだ誰にも分からない。しかし、彼の中に芽生えた希望と決意が、きっとその道を明るく照らしてくれることだろう。
月のひと皿 ~運命を紡ぐキッチン~ まさか からだ @panndamann74
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