第3話 月のリズム ~新月と満月の力~
翌日、カイは「月のキッチン」を再び訪れた。ツキの店には相変わらず穏やかな空気が漂っている。昨夜の料理の記憶が心の中に深く刻まれていた彼は、ツキに直接いろいろなことを聞いてみたくなっていた。
「ツキさん、昨日の料理、本当に不思議でした。僕の心が動かされたのを感じました。でも、どうしてあんなに特別なものが作れるんですか?」
ツキは穏やかな笑みを浮かべて、彼をテーブルに招き入れた。
「それは、月のリズムを活かしているからよ。月の満ち欠けには、それぞれ独特の力があるの。」
ツキは棚から一冊の古びた本を取り出し、ページをめくりながら話し始めた。
「新月の時は、月が完全に見えなくなるでしょう? これは何もないゼロの状態を表しているの。すべてを浄化し、新しいスタートを切るのに最適なタイミングよ。」
カイは興味深そうに耳を傾けた。
「例えば、デトックスや整理整頓、心の中の不要な感情を手放すときに、新月の力を借りると効果が高まるわ。そして、新月には新しい目標や願いを立てることもおすすめよ。このタイミングで願うことは、月が満ちていくにつれて少しずつ形になっていくの。」
ツキは小さなハーブの瓶を取り出して見せた。
「これも新月の夜に採取したハーブなの。浄化の力が強くなるこの時期に摘むことで、料理に特別な効果を与えられるのよ。」
カイはその話を聞いて、自分の心にも新たな目標を立てるべきなのかもしれないと思い始めた。
次に、ツキは満月について語り始めた。
「満月は、すべてが満ちた状態を象徴しているわ。この時期は、達成や感謝をするのに適しているの。そして、心身にエネルギーを取り込むのにも最高のタイミング。」
カイはその話に深く引き込まれた。
「満月の夜には、自然の力が最大限に高まるの。野菜や果物もこの時期に収穫すると栄養価が高くなるって言われているわ。それに、感情も高まりやすい時期だから、自分の心と向き合うことも大切ね。」
ツキは、昨日の料理にも満月のエネルギーを込めていたと明かした。
「カイが感じたのは、そのエネルギーのおかげかもしれないわ。満月の力があなたの心を揺り動かし、眠っていた感情を呼び覚ましたのかも。」
カイは、自分の中で昨日感じた感覚が少しずつ繋がっていくのを感じた。
ツキは最後に、自然のリズムに寄り添うことの大切さを説いた。
「現代の生活では、月の満ち欠けや自然のリズムに気づく機会が少ないわ。でも、私たちの体や心は本来、自然と調和して生きるようにできているの。だからこそ、月のリズムを取り入れることで、心身のバランスを整えることができるのよ。」
カイはふと、都会での忙しい生活を振り返った。時計やスケジュールに追われ、自然に目を向ける余裕などなかった自分を思い出す。
「僕も、もっと自然のリズムを意識するべきなのかもしれません。」
ツキは優しく頷いた。
「月のリズムに寄り添うことで、自分自身とも向き合いやすくなるわ。カイがこれからどんな道を歩むとしても、このリズムを少し意識するだけで、大きな変化が起きるはずよ。」
カイはツキの言葉を心に刻み込んだ。そして、月のリズムを意識しながら、自分の新しい人生を少しずつ形作っていこうと決意した。
外に出ると、新月に向かって欠け始めた月が、空にひっそりと輝いていた。それは、カイの心に生まれた小さな決意の光そのもののようだった。
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