第2話 逃避
臆病な私の体はもう一人の〝わたし〟に支配されるようになった。私なのに私じゃない不思議な感覚。誰にも負けない、そんな勇気が湧いてきた。
夜になると私は家を飛び出した。その方が父も私も平和だったから。距離を置くことでしか父も私も幸せにはなれなかった。
いつものシャッター街に行く。日々の鬱憤を晴らす場所。会社帰りのサラリーマンにワンパンし財布をかっさらう。〝わたし〟は財布の中身を見て喜んでいたが、私自身は全く喜ぶことができなかった。
手に入れたお金はゲームセンターで消えていく。大金が入った時はブランド品を買ったりした。そして〝わたし〟は私の体を自分の物にしようとしていた。
でも、どこか心地良かった。普段の私にはできないことができ、スカッとしたからだ。悪いことだと分かっているはず。私も〝わたし〟も。分かっているけれど、衝動を抑えることができなかった。
朝日が昇る。〝わたし〟が私に代わる時。私は家に帰らないまま、学校へと向かった……。
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