優しいお父さん

 流石に証拠を出されると貴族でも抗うことはできず、普通に有罪となった。

 それに、前科持ちである上に、借金を抱え、龍地の就職は絶望的だった。

 そして、権力を一気に失った西園寺家(龍地とその家族)は、結希たちの婚約破棄を断ることはできなかった。

 が、ここで問題発生。

 婚約破棄はできた。

 できたが、婚約をしたときの条件が問題ったのだ。

 龍地の犯罪の慰謝料は、結希の家が7割払わないといけない。

 龍地は、結希のお父さんのサインが書かれた契約書を突き出した。

 そこには、西園寺家が、金を請求された場合、藤堂(結希の苗字)家が7割負担する、と書かれていた。

 おいじじいい、てめぇなんてもんにサインしてんだよ!

 まあ、今結希のお父さんを責めても仕方ない。

 俺のせいで、結希は、貧乏に…

 結希を自分の彼女にしたいという、欲望のせいで、大切な人の地位を奪ってしまった。

 もう俺に、結希のことを「好き」って言う資格はない。

 そうして、結希と、その両親に土下座した。

「言う言葉が見つかりません。謝ることが多すぎて何から謝ればいいか分かりません。龍地の慰謝料の7割は、俺が働いて稼ぎます。」

 俺の言葉に、結希は口を開けてぽかんとしていた。

「君は、結希が龍地のことを嫌っているいるからこうしてくれたんだよね?じゃあ、私は、とても嬉しいよ。」

 その言葉に、俺は顔を上げようとしてしまった。

 いや、だめだ。

 結希の為とはいえ、やっていいことと、やってはいけないことがある。

 俺は頭を上げない。

「そこまで、言うのなら、払ってもらおうかな。」

 そうだ、それがいい。

 俺は大企業に入って、結希たちのために働かなくてはならない。

「結希はどうしたい?」

 お父さんは、結希に聞いた。

「これからも、はるかと仲良くしたい。」

 それを聞いた父は、にこっと笑って、口を開いた。

「じゃあ、払うってことで全部チャラ!」

 貴族らしくないセリフは、結希のお父さんの口から出たものだった。

 俺は嬉しくなり、顔を上げることができなかった。

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