ライバルをタコ殴り
ボクシングの試合当日
俺はリングの上でグローブを装着していた。
龍地も左手のグローブを着け終わり、右手のグローブを着け始めた。
龍地の体を見た感じかなり強そうだ。
筋肉質で、身長もかなり高い。
俺よりも8cmほど高いだろうか。
少しずつ試合の準備が整っていく。
観客には、結希もいた。
結希は、また別の日に試合があるから、今日は暇なのだ。
絶対に負けられない。
今日の目的は、龍地をボコボコにし、こいつの評価を落とす。
だがみんなは、龍地を慰めるだろう。
表面上は何も変わっていないが、みんな、心の中で龍地に対して嫌悪感を持つようになる。
それと、嫌いな奴がボコボコにされるのを見て、龍地のことが嫌いな奴は快感を覚えるだろう。
そいつらは俺に好印象を持つようになる。
それに加えて俺は成績も学年一位で、女子からモテるから、それで好意は加速する。
この試合はそれに必要なことだ。
右手のグローブを着け終わった龍地は準備が整ったようだ。
『かーん』
ゴングが鳴った瞬間、俺と龍地は戦闘態勢に入った。
龍地の構えを見た感じ、普通のボクシングスタイルだ。
アイツはグローブを着けた、安全な試合しかしてこなかったんだろうな。
それなら、俺の方が強いだろう。
そんなことを考えていたら、龍地が無造作に距離を詰めてきた。
パンチを打つ体制だ!
こいつは、一体何を考えているんだ。
この紫陽花とかいうやつは、俺が結希の許嫁に相応しいかどうか知りたいらしい。
まあ、元々参加する競技はどれでも良かったしな。
それにここで結希の前でこのスカしたボディーガードをボコボコにすれば、結希に好かれるかもしれない。
結希は俺のことを嫌いであろうが、好きであろうが、どうせ俺の物になる。
でも、俺のことが嫌いだったら良いおもちゃにならないかもしれない。
だから挑戦を受けてやったのにこいつは、俺のグローブがもうすぐ装着し終わるのにぼーっとしている。
何を考えているのかよくわからないやつだ。
…着け終わった。
俺とはるかは少しずつ距離を詰める。
『かーん』
ゴングが鳴った数秒後、俺は一気に距離を詰め、しっかりと打つ体制に入り、スカした顔めがけてパンチを放った。
だが、華麗に躱される。
それどころか、大きな隙を晒してしまった。
放った右ストレートを、はるかは外側に避けた。
カウンターが来る!
え…速…!?
はるかの腕が一瞬ブレると同時に俺の腹に激痛が走った。
はるかのカウンターが入った。
パンチを打った直後だから、腹筋は伸びきって、全く役に立たなかった。
パンチを食らって、俺は回復するために、バックステップで距離を置く。
だが、はるかは不器用に距離を詰め、パンチを放つ。
当然、それを躱す。
そして、顔面にカウンターを入れた直後、俺の視界の左端には、はるかの赤いグローブが迫っていた。
は?カウンターを食らったんだぞ?
無防備な顔面にパンチを食らったんだぞ!
なんでそれでパンチを打ってこれるんだよ!?
次の瞬間、俺は脳を弾き飛ばされたような衝撃を頭に食らった。
一瞬、いや、一秒ほど何も考えられなかった。
ただただ視界が回転していくのを眺めることしか出来なかった。
まずい!
倒れたらKOになってしまう。
だがもう遅いようだ。
俺の体はもう立ち上がれない姿勢になっていた。
だが、幸運の女神は俺の見方をしてくれているようだ。
俺の体はたまたま審判にぶつかり、地面に到達するまでの時間が、ほんの少しだけ伸びた。
あ、危ねぇー!
ギリギリ足を置くことができた。
が、安心したのも束の間。
はるかは俺の前にいた。
そして、俺の顔面にパンチのラッシュを食らわせ…
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